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» 2012年10月03日 08時00分 公開

成功するITマネージャーの「人づきあい術」:人間関係を悪化させるITマネージャーの言動

メンバーに積極的な行動を求めても、手応えがないと感じたことはないだろうか。メンバーとの良好な関係を築くためにITマネージャーが自身の言動をチェックできる方法を紹介する。

[青木裕,ITmedia]

 今回は、ITマネージャーがプロジェクトメンバーとの人間関係を構築していくための具体的な行動について解説する。読者のあなたがITマネージャーなら、まずは次の質問に答えていただきたい。現状を確認するためのものだ。

あなたは、メンバーに対して以下、次のように感じることはありますか?

  • □ちょっとした確認を怠り、勝手な判断で物事を進めてしまう
  • □自分から相談しないために、課題にぶつかると止まってしまう
  • □進捗会議や定例会議で意見を言わない
  • □アイデアが出てこない
  • □ホウレンソウ(報告・連絡・相談)がない、またはあってもタイミングが遅い

 さて、幾つ当てはまっただろうか。

 1つでも当てはまれば、メンバーにはもっと「自分から働きかけをしてほしい」「自発的になってほしい」「自分の頭で考えてほしい」と思うのではないだろうか。

 上記の項目が当てはまる原因は2つある。1つは、メンバー自身のスキルやマインドに問題がある場合だ。ITマネージャーとしては、思いつく対応策を全て実施してみたものの、状況が好転しないという感じではないだろうか。そのようなメンバーに関与するほどに悩みが増し、エネルギーと時間を浪費する。エネルギーと時間を費やした割にはさして成果が上がらず、さらに悩みが深まっていくという、典型的な成果の上がらない無限ループに陥る。チーム全体のパフォーマンスを上げるという観点に立てば、そのようなメンバーに関わり過ぎないようにすることが、ITマネージャーとして取るべきスタンスの鉄則になる。

 もう1つの原因は、ITマネージャーとメンバーの人間関係に問題がある場合だ。先ほどの質問項目を見直してほしい。実は、どの項目もITマネージャーとメンバーの人間関係に課題があると当てはまるようになっている。

 端的に言えば、好きな人の意見は受け入れられるが、嫌いな人の話は正論であっても聞きたくないという人間の心理が働いていることを示している。メンバーに「笛吹けど踊らず」と感じることがあるなら、自分とメンバーの人間関係が良好かどうかを確かめた方が良い。人間関係の度合いは客観的に計ることができないため、ここは主観で判断することになる。

 ITマネージャーとしては、「自分はメンバーと十分にコミュニケーションが取れている」と思いたいところである。しかし、「自分はできている」と思っていることほど、本当にできているのかどうかを疑ってみるべきだ。自分自身のことを正確に理解することは本当に難しい(詳しくは第1回で紹介した「思考の枠」を参照のこと)。ITマネージャーというリーダーの役割とは「他の人とともに目標達成に向けて進む人」であり、これを体現するためにも、ぜひ一度は自身の課題に向き合ってみてほしい。

 それでは、メンバーとの人間関係を良くするために具体的に何をしたら良いのだろうか。ピーター・ドラッカーの言葉にヒントがある。

「私が今まで出会ったリーダーの半数は、何をすべきか学ぶ必要はない。彼らが学ぶ必要があるのは何をやめるべきかだ」

 ITマネージャーがメンバーとの人間関係を構築するために、やめるべきこととは何だろうか。エグゼクティブ・コーチングの第一人者であるマーシャル・ゴールドスミス氏のコンテンツをもとに、ITマネージャー向けに次のチェックリストを弊社で作成した。具体的にITマネージャーがやめるべき言動は20個ある。自身に当てはまるものをチェックしてみてほしい。

  1. □メンバーの気持ちや状態を察知しない
  2. □トラブルを報告すると、嫌な顔をする
  3. □自分の作業を優先し、メンバーからの質問や相談などに時間を割こうとしない
  4. □自分の発言やメンバーに依頼した事項の内容を忘れている
  5. □顧客や他部門と調整する力がなく、先方に一方的に仕様や納期を決められてしまう
  6. □立ち話程度で済む内容でも、やたらと会議を開きたがる
  7. □話がとにかく長い
  8. □思考や発言に論理性がない
  9. □根拠(データ)のない解釈で物事を判断し、進める
  10. □仕事の目的や成果物のイメージがあいまいなまま、仕事を依頼する(丸投げする)
  11. □効率や生産性を優先し、モチベーションを上げることに関心がない
  12. □感情の起伏が激しい
  13. □メンバーの話を聞かない
  14. □よほどのことがない限り、メンバーを認めない
  15. □自分の手柄に執着し、チーム全体のことを考えない
  16. □感謝や謝罪の気持ちを表さない
  17. □人を傷つける破壊的コメントをする
  18. □「いや」「しかし」「でも」で文章を始める
  19. □責任回避する
  20. □特定のメンバーを優遇(あるいは冷遇)する

※マーシャル・ゴールドスミス著『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(日本経済新聞出版社)を一部改訂

 複数の項目に当てはまった場合は、その中から最も周囲に悪影響を及ぼしているものを1つだけ選んでほしい。一度に複数の悪癖を改善することは困難なので、まずは1つに絞り込むことが重要である。

 リーダーとしての真の課題をあぶり出すなら、このチェックリストをプロジェクトのメンバーに渡して、当てはまるものをチェックしてもらうと良い。

 繰り返しになるが、ITマネージャーの役割は「他の人とともに目標達成に向けて進む人」であるからだ。自分が課題だと思うことではなく、メンバーが課題だと思っていることを改善した方が、プロジェクトのパフォーマンスは飛躍的に高まる。この20個の悪癖がITマネージャーとメンバーとの「協働力」を妨げる原因である。

 実際に弊社では数百人にこうしたエグゼクティブ・コーチングを行ってきたが、結論を言えば、ITマネージャーが自分の課題だと思う項目とメンバーが課題だと思う項目にズレがある場合がかなりある。これも「思考の枠」が引き起こす現象の一つである。

 メンバーから課題を指摘されることは、ITマネージャーにとって気持ちのいいものではない。時にはらわたが煮えくり返るような思いもする。その時に、指摘されたことを放置するか、真剣に受け止めて改善しようとするかはITマネージャーの自己責任である。「話すは技術、聞くは器」などという言葉があるが、放置してしまえばそれまでだ。会社(チーム)は社長(リーダー)の器以上にならないと言われる所以でもある。

 成果にこだわるITマネージャーとしては、「エゴ」や「プライド」を捨て去ってはどうだろうか。手放すまでは怖いかもしれないが、手放してみると、きっと大したことはないと感じるはずだ。身軽になり、さらに優秀なITマネージャーとして活躍することは間違いない。

 次回は、チェックシートで具体的に当てはまった項目を改善していくための行動と、それを定着させる方法について解説する。

執筆者プロフィール

青木裕(あおき ゆう)、ビジネスコーチ株式会社執行役員 ビジネスコーチ アジア 取締役。SIerにてプロジェクト運営にコーチングを導入。常駐先で運営手法が評価を得て、コーチング研修を実施。2006年、ビジネスコーチ株式会社に参画。2010年より現職。本連載記事を再編集した電子書籍「成功するITマネージャーの『人づきあい術』」が主要電子書店で入手可能です。


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