あなたの言動を改善するアクションをルーティン化せよ成功するITマネージャーの「人づきあい術」

ITマネージャーが改善すべき言動を洗い出す「フィードフォワード」から得たヒントをどのように日常的な行動につなげていくべきか。今回はそのための「ピアコーチング」をご紹介しよう。

» 2012年10月17日 08時00分 公開
[青木裕,ITmedia]

 ITマネージャーがやめるべき言動と、その言動を改善していくための手掛かりを得る方法が「フィードフォワード」である。今回は、フィードフォワードで得たアイデアを行動として定着化させる「ピアコーチング」について解説する。

 実は今回のテーマである「行動の定着化」が、多くの人にとって一番に難しいと感じるところだろうと思う。例えば、ダイエット関連の本がたくさん売れても、肥満を気にせず生活できるようになった人が増えたという話をあまり耳にしない。本を読む、つまり、知識が増えることと行動できることとは違う。そして、行動できることと、その行動を継続させることには、さらに違いがある。知識を新しい行動に移すことは難しいが、新しい行動を「習慣」にまで定着化させるのはもっと難しいのだ。

 「リーダーの言動」は、習慣のひとつである。だから、改善のための行動(行動変革)を継続しなければ、すぐに元に戻ってしまう。リーダーが行動変革に継続して取り組まなければならない理由はもう一つある。

 その理由とは、リーダーの言動を見て周りの人が持っている「リーダーはこういう人だ」という認識(レッテル)を変えていくのに、時間がかかるということである。

 それでは、新しい行動をどのようにして継続するようにしていけば良いのだろうか。ヒントは多くの人が「自分にも当てはまる」と思うであろう、2種類の人間の性質に隠されている。

人間とは怠惰である

 多くの人が継続できないということは、個人としての能力が劣っているということではない。人間は元来、怠惰だ。

 今、コラムを読んでいただいているあなたは、5分後にどんな行動をしているだろうか。恐らく、(私がこんなことを言わなければ)まだPCの前に座って別の記事を読んでいるのではないだろうか。そのくらい人は惰性で行動をしてしまうものである。

誰かと一緒なら頑張れる

 もし、あなたが朝にジョギングをするということを決めたとしよう。自分ひとりで走る場合と、誰かと公園で待ち合わせして一緒に走る場合に違いはないだろうか。

 冬の寒い朝や雨が降っているような時を想像してみてほしい。ひとりであれば、自分に言い訳をして走らない選択をすることもできる。しかし、誰かと一緒であれば約束を果たすために待ち合わせ場所に行き、ジョギングをするのではないだろうか。

 これが、人の介在によってもたらされる価値である。だから、私たちは他の人と一緒に行動することで、継続しやすくする仕組みを「ピアコーチング」と呼んでいる。

 「ピアコーチング」とは、同じ立場や同僚同士で行う行動変革のコーチングのことだ。人が実践する「P2P(Peer to Peer))と理解していただければと思う。

 ピアコーチングの実施ステップは次の3つだ。

  1. あなたが変えようとしている行動を実現・継続するために、自分自身に問いかける質問(「Yes」「No」で答えられるものに限定)を5個作る
  2. 1で作成した質問の結果を毎日セルフチェックする
  3. 1週間ごとにピアコーチに聞いてもらう

 各ステップの詳細を見てみよう。

1.あなたが変えようとしている行動を実現・継続するために、自分自身に問いかける質問(「Yes」「NO」で答えられるものに限定)を5個作る。


 1で使用する5個の質問は次のようなフォーマットで作成する。

質問フォーマットのサンプル(右)とテンプレート(クリックで拡大)

 質問ごとにウェイト付けを行い、1日で全ての行動ができたら10点で満点になるようにする。質問は「Yes」「No」で答えられるものに限定しておくと良い。1日を振り返ってみたときに、質問ができたかどうか答えやすいからである。

 ちなみに、質問を自分だけでつくるのは意外と難しい。だからこそ、前回解説した「フィードフォワード」を使ってアイデアをたくさん集め、自分なりにアレンジしてみてほしい。例えば、Facebookの友人にフィードフォワードしてもらっても良いと思う。友人も一言コメントを入れるだけだ。他人の英知を活用しない手はない。

2.1で作成した質問の結果を毎日セルフチェックする。


 毎日ゲーム感覚でやってみてほしい。点数で「見える化」されるのは、ダイエットで体重計に乗るのと同じように結構面白い。ただ、この5個の質問を毎日繰り返しチェックし続ける。とてもシンプルなことだ。とにかく面倒くさがらずに継続してみよう。

3.1週間ごとにピアコーチに聞いてもらう。


 ピアコーチは、同期や友人など気軽に話ができて対等な関係にある人を選ぶのが良い。必ずしも同じ職場にいる人である必要はない。ピアコーチに聞いてもらう質問は、次のようなものである。

「1週間やってみてどうだった?」

「何かうまくいったことはある?」

「何を心がけて実践していたの?」

 このピアコーチングのポイントは、ピアコーチが相手を誉めるという点にある。ピアコーチからできていないことを批判されたり指摘されたりしたら、すぐにやる気がなくなってしまう。ピアコーチは相手の良い点をとにかく見つけ、誉めるのである。誉めるために会話をする時間がある。

 そのくらいの気持ちでピアコーチングをすると楽しく、継続できる。時間にしたらお互いに質問をして、誉めあっても1分もあれば終わってしまう。雑談から仕事のヒントや気分転換が得られるといった副次的な効果もあるので、ぜひ気軽にやってみてほしい。


 今回は継続する仕組みとして「ピアコーチング」をご紹介した。ただし、ITマネージャーの役割は「他の人とともに目的達成に向けて進む人」である。周囲の人がITマネージャーの行動を変わった(良くなった)と認識しない限り、残念ながら行動変革の効果はないも同然である。そこで次回は、周囲の見方を変える方法について解説する。

執筆者プロフィール

青木裕(あおき ゆう)、ビジネスコーチ株式会社執行役員 ビジネスコーチ アジア 取締役。SIerにてプロジェクト運営にコーチングを導入。常駐先で運営手法が評価を得て、コーチング研修を実施。2006年、ビジネスコーチ株式会社に参画。2010年より現職。本連載記事を再編集した電子書籍「成功するITマネージャーの『人づきあい術』」が主要電子書店で入手可能です。


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