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» 2012年10月22日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:Windows 8で大きな賭けに出るマイクロソフト

PCメーカー各社が先週、間もなく発売されるマイクロソフトの「Windows 8」を搭載した製品を相次いで発表した。鳴り物入りの新OS、果たして企業ユースの行方は――。

[松岡功,ITmedia]

PC各社がWindows 8搭載製品を発表

 「いやあ、本当にWindows 8の登場を待っていたんですよ」

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の岡隆史 取締役副社長執行役員は10月18日、同社が開いたPC新製品発表会で、ゲストに迎えた日本マイクロソフトの樋口泰行代表執行役社長へこう語りかけた。

 日本HPの岡隆史副社長(左)と日本マイクロソフトの樋口泰行社長 日本HPの岡隆史副社長(左)と日本マイクロソフトの樋口泰行社長

 日本HPが発表した目玉商品は、ビジネス向けのWindows 8搭載タブレットだ。岡氏は、「セキュリティの強化や運用管理の効率化など企業が求めるニーズを満たしつつ、エンドユーザーが思わず使いたくなるようなデザイン性や使い勝手を高めた製品だ」とアピールし、Windows 8の登場に合わせてビジネス向けタブレットを投入したことを明らかにした。

 この日本HPをはじめ、PCメーカー各社が先週、Windows 8搭載製品を相次いで発表した。日本HP以外の各社はコンシューマー向けが中心だが、目玉商品はやはりタブレットタイプである。

 10月19日には、国内PC市場でトップシェアを競うNECパーソナルコンピュータと富士通も新製品を発表。両社の発表会見で出た話も合わせて、企業ユースとしてのWindows 8の行方について考察してみたい。なお、各社が発表した新製品の内容については、すでに報道されているので関連記事等をご覧いただきたい。

 それにしても、10月26日のWindows 8の発売を控えてPCメーカー各社がこぞって新製品を発表するという業界を挙げての一大イベントは、Windowsのメジャーバージョンアップならではの現象だ。各社の発表会にゲストとして引っ張りだこの日本マイクロソフトの樋口社長は、各所で同様にこう説明した。

 「Windows 8はタブレットOSとしての機能を備え、従来のWindows資産も活用できる。さらにキーボードとマウスをつなげば、生産性の高い業務作業も行える。まさにタブレットとPCの1台2役で幅広いニーズをカバーするベストなソリューションだ」

 Windows 8の特徴については、すでに多くの情報が流れているのでここでは割愛するが、NECパーソナルコンピュータの高塚栄社長がWindows 8登場の意味について端的に説明していたので紹介しておこう。

 「タッチパネルを採用してスマートデバイスとPCの操作環境を共通化したWindows 8は、かつて大きな社会現象となったWindows 95以来、17年ぶりのユーザーインタフェース革命を巻き起こすものとなる」

マイクロソフトが大きな賭けに出る理由

 富士通はこのWindows 8のユーザーインタフェースに独自の技術を付加して、新製品のアドバンテージを高めている。同社の齋藤邦彰執行役員によると、「当社のヒューマン・セントリック・テクノロジーを駆使して、タッチ操作の一歩先を行く快適操作を実現し、Windows 8を150%活用できるようにした」という。

 このようにPCメーカーがこぞって担ぐWindows 8だが、企業ユースの観点から「Windows 7と比べてユーザーインタフェースをはじめとしてOSの根幹部分に大きな変更がなされたWindows 8は、OSの大きな変化を望まない企業にとってはリスクが高く、採用には慎重になる可能性がある」との見方もある。

 この見方は、ガートナーが10月上旬に都内で開いたシンポジウムで明らかにしたもので、同社は「Windows 8はマイクロソフトにとってモバイルデバイス分野への大きな挑戦」とし、とりわけ企業ユースに対しては「リスクを取った大きな賭けに出ている」との見解を示した。

 ただ、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス分野ではアップルのiPhone/iPadやグーグルのAndroidに対して劣勢を強いられていることから、Windows 8で既存のクライアントPC分野の牙城を守りつつ、モバイルデバイス分野へ攻勢をかけるのは、マイクロソフトにとって必然の策だ。

 同社にとっては、個人ユースのモバイルデバイス市場で確固たるシェアを獲得すれば、ITのコンシューマライゼーション化が追い風となって、企業ユースもWindows 8へ移行するだろうとの読みがあるのかもしれない。

 しかし、こうした読みは、もしWindows 8によってモバイルデバイス市場でシェア奪還が思惑通り進まなかった場合、とくにタブレットの普及をきっかけにWindowsの存在感が薄れ、ひいては既存のクライアントPC分野の牙城も揺るぎかねない危険性を、マイクロソフトは重々承知しているはずだ。

 いずれにしても、Windows 8の登場は、IT利用環境が大きく変わりつつあるのを象徴する動きであることは間違いない。企業ユースの観点からガートナーが語る「企業はOSの大きな変化を望まない」との定説さえも、これからは企業自らが変わる方向へ動かないと、激しいビジネス競争を生き残っていくことができないかもしれない。

 日本HPの岡氏が会見で、自らに言い聞かせるようにこう語っていた。

 「ITのコンシューマライゼーションやモバイル化が急速に進む中、企業で使われるデバイスやシステムもこうしたニーズに対応したものを提供していかなくてはならない。このことは、ITベンダーとして今後、生き残れるかどうかということに直結すると認識している」

 これは他のITベンダーも、さらにいえばユーザー企業も根本的な考え方は同じではないか。もちろん、マイクロソフトもだ。そう考えると、マイクロソフトにとってWindows 8は、覚悟を持って打つべくして打った「大きな賭け」なのだろう。

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