富士通が新たなSI方針、5000人規模の人材育成も目標に

顧客企業の経営やビジネスに直結したSIサービスを体現するという新コンセプトを掲げる。これを担う人材を2015年までに5000人規模にするという。

» 2013年01月17日 15時15分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通は1月17日、メディア向けのシステムインテグレーション(SI)事業に関する説明会で、「トータルサービスマネジメント」というSIの新コンセプトと、これを担う人材を2015年までに5000人体制にすると発表した。

 会見したSI部門長補佐の柴田徹氏によると、トータルサービスマネジメントとは、「顧客の成長戦略を共有し、ビジネスの発展に向けてICTのベストプラクティスを実現する」ものという。具体的には、(1)成長戦略に照らしたICT活用のあるべき姿を提示、(2)既存のIT資産の評価および位置付けの明確化、(3)必要なリソースの提供、(4)運営に関する評価/改善の実施――とした。

 また、トータルサービスマネジメントを推進する人材について、「役割」の視点から「プロデューサー」「イノベーター」「コンサルタント」「インテグレーター」「マネージャー」「アーキテクト」の6タイプを設定。「プロデューサー」「イノベーター」「コンサルタント」「インテグレーター」については、2015年までに合計で5000人規模にするとしている。柴田氏は、「本来果たすべき役割に基づいてSIのあり方を再定義し、顧客企業のビジネス革新や競争力向上を実現できるICT活用をサポートしていく」と述べている。

6タイプの「役割」とその定義

IT投資に対する現実を直視する

 同社のSI事業に関する説明会は昨年1月にも開催。柴田氏は、SIビジネスが「モノ(ハードやソフトウェアなど)」を作ることが価値とされた時代から「コト(プロセスや運用の効率化など)」による対応、さらに、利用による価値創造にシフトしているとして、今回発表の人材育成方針のベースとなる「ビジネスプロデューサ」「フィールド・イノベータ」「コンサルタント」「サービスインテグレータ」の4つの職務の導入を明らかにしていた。

 今回の説明で柴田氏は、既存のIT資産に対する投資がIT投資全体の約7割を占めるという日本企業の状況があまり変化していないと指摘する。これは海外企業に比べて10ポイント以上も高く、海外企業ではビジネス拡大を目的にした新規のIT投資の割合が高いという。同社では国内企業が海外企業のようなIT投資をできるよう、既存のIT資産を評価するツールやサービスなどを提供。だが、実際にはこれらを活用して既存のIT資産の問題を認識しながらも、新規の投資に踏み切れないでいる企業が多いという。

富士通が提唱しているICT活用の方向性

 「これまでの投資に対する効果が十分では無いといった現実を受け入れがたい面もある。特に国内企業からは、成長戦略につながるものでなければ、新規のIT投資も既存のIT資産の見直しもできないという声をいただいている。当社も具体的な提案やサポートを十分にできていなかった」と柴田氏は述べた。新たなSIコンセプトと人材育成によって、顧客企業を具体的にサポートしていく体制を確立させたい考えだ。

 トータルサービスマネジメントではビジネスにおける企画から具体化、利活用、評価のライフサイクルとシステム構築のサイクルを一体的に捉え、6タイプの役割をそれぞれに担う同社の人材が顧客企業を全面的に支援していく。6タイプの役割のうち新規の4タイプを担う約5000人の内訳は、インテグレーターが40%、イノベーターが30%、コンサルタントが20%、プロデューサーが10%。マネージャーとアーキテクトは既存の教育システムで育成を進める。

トータルサービスマネジメントの概念

 なお、富士通は昨年4月に地域SE会社を再編しているが、柴田氏によれば、富士通本体や地域SE会社のシステムエンジニアの職種などが大きく変わるものではなく、新たなコンセプトと役割を業務の中で実践していくことになるという。

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