エライ人は文章を読まない――システム導入で知っておくべき6つのことIT現場ウォッチャー・村上福之が斬る!

多くの困難を伴う「パッケージ導入」。IT部門が経営陣向けに説明する時とプロジェクトを動かす時では、異なる視点が必要だ。クレイジーワークス総裁の村上福之さんによる連載の最終回は、ITマネジャーに求められる“二枚舌スタイル”について。

» 2013年03月08日 10時00分 公開
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 企業内システムのパッケージ導入……これははっきり言って、大変です。

 結局、「えらい人と話すモード」と「現場ベタベタモード」を使い分けられる人でないといけません。「偉い人には それが わからんのですよ」を前提にしないと、そもそもIT部門なんてやっていけないのです。以下、独断と偏見が大いに含まれますが、パッケージ導入の各局面でITマネジャーに求められる視点についてご紹介します。

えらい人に説明する時に大事な3つのこと

 まず、IT部門が社内の経営陣と話す時に必要なのは以下の3つの視点です。

  1. えらい人は文章を3行以上読まない
  2. えらい人は日経新聞に書いてあることを盲目的に信じる。
  3. えらい人は大手企業がやっていることを盲目的に信じる。

えらい人は文章を3行以上読まない

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 特に中小企業のえらい人にとって、IT部門の言っていることなんて「某政党の政策演説くらいどうでもいい」です。

 経営者は楽してお金がもうかればいいですし、IT部門が単なるコストセンターでしかないと思っている人も多いのです。残念ながら、数ページにもわたる提案書を書いても、パルプの木の伐採を促進するだけでしかないことも多いです。

 じゃあどうすればいいかというと、要は、1ページ目に24ポイント以上のでっかい字で3行でまとめて、あとは適当に右肩上がりのグラフでも組み合わせておけばいいのです。

えらい人は日経新聞に書いてあることを盲目的に信じる

 キリスト教徒が聖書を信じたり、イスラム教徒がコーランに書いてあることを信じるように、えらい人は日経新聞に書いてあることを盲目的に信じます。

 ネット業界では「ドコモがiPhone発売!」などの“飛ばし記事”が多いと話題になりがちな日経新聞ですが、中小企業のえらい人にとっては、日経新聞はコーランと同じ“聖典”です。つまり、あなたが導入したいパッケージやソリューションがあれば、日経新聞の引用を取ってくればいいのです。日経新聞でなくても、日経産業新聞、日経流通新聞、日刊工業新聞などでもいいです。

 普通に広報宣伝活動をしているそれなりの規模のベンダーであれば、日経シリーズのどれかに載っている場合が多いので、営業や広報などに問い合わせれば記事が出てくる可能性が高いです。新聞記事が必ずしも正しいとは限らないことは、リテラシーの高い人たちには知られていますが、えらい人は日経コーランを信用します。

えらい人は大手企業への導入実績を盲目的に信じる

 社内SNSなどを導入したい時、パッケージ製品のメリットをえらい人にいくら説明しても理解されません。タスク管理が分かりやすいなどと説明しても、えらい人には分からないのです。ぐちゃぐちゃ説明するより「KDDIが導入して、すごい効率が上がったそうです!」と言ったほうがはるかに分かりやすいです。

 同様にSFA(営業支援)パッケージの導入に当たっても、機能をいろいろ説明するより「キヤノンが導入して売り上げが上がりました!」と説明したほうが圧倒的に早いです。重要なのは“大企業の名前”です。

「現場ベタベタモード」で大事なこと

 一方、パッケージの導入に当たって、IT部門の現場で求められるのは以下の3つの視点です。

  1. 実際に使って細かいところまで機能をチェックする。
  2. 日経新聞に書いてあることは盲目的に信じない
  3. 大手への導入実績は盲目的に信じない

 先ほどの「えらい人と話す時のポイント」と逆のことを書いている項目があるような気がしますが、きっと気のせいです。

実際に使って細かいところまで機能をチェックする

 導入コストと時間はどれだけかかるのか、教育コストと時間はどれだけかかるのか、カスタマイズがどれだけ必要なのか……と、徹底的に見積っておかないと後から面倒くさいことになります。

 また、一般的にはパッケージ製品の導入後に社内説明会を開き、キーになる人に使ってもらえるよう根回しをしてから「いざ公開!」となるのですが、実際には事前の予想通りにならない場合がほとんどなので、最悪のシナリオをたくさん作っておかないといけません。

 特に最近、モバイル対応機能がどれだけ充実しているかが製品選定のキーになる場合が多いですが、抜けている製品も案外あったりするので注意が必要です。

日経新聞に書いてあることは盲目的に信じない

 全く信じないというと嘘になりますが、パッケージ開発会社の広報が日経新聞に流している情報は“チャンピオンスペック”でしかないこともあるので、盲目的に信じるのもどうかと思います。また、新聞に載っているから、IT業界の流行だからという理由で導入しても、社内文化がフィットしないシステムも多いです。

 例えば、社内SNSやSFA、CRM(顧客管理システム)などは「活用して当然」というカルチャーができつつありますが、事前に十分検証しないで導入した結果、社内文化と合わずに使われなくなるケースも少なくありません。

大手への導入実績は信じない

 先ほど、えらい人に説明する時には「大手が導入してるからいいんです!」でゴリ押ししましたが、実際は大手が導入したからといってその製品がいいとは全く限りません。大手が使っていてもカスみたいなパッケージなんて、夢の島で埋め立てるほどあります。

 確かに大手の導入実績は大事ですが、それはあくまで社内稟議の時の材料として大事なのであって、自社で導入して実際に効果があるかどうかは全く別の話なのです。


 多くの面で、経営陣と現場の「要望」や「意見」は相反します。

 したがって、そのどちらとも複合的に接点を持つITマネジャーは、相反するファクターを持たざるを得ません。つまり「えらい人には分かりやすく、現場には慎重に」という“二枚舌”のスタイルが大事だと思っています。

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村上福之(むらかみ・ふくゆき) 1975年大阪府生まれ、クレイジーワークス代表取締役総裁。大手家電メーカーの開発者からフリーに転身し、オーストラリアの語学学校でのシステム開発などさまざまなプロジェクトを担当。帰国後に開発会社クレイジーワークスを創業、代表取締役総裁を務める。近著は「ソーシャルもうええねん」。Twitter「@fukuyuki


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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年4月7日


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