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» 2013年03月14日 08時30分 UPDATE

システムインテグレーターが生き残る道【前編】

クラウドコンピューティングの台頭により企業情報システムの構築および運用形態は大きく様変わりしようとしている。システムインテグレーターがこれまで収益源としていたオンプレミス型のインフラ構築、受託によるアプリケーションのスクラッチ開発、パッケージを活用した導入支援およびカスタマイズといった事業だけでは大きな成長を望むことはできなくなってきている。

[内山悟志(ITR),ITmedia]

システムインテグレーターを取り巻くビジネス環境

 リーマン・ショック後、システムインテグレーター(SIer)を取り巻くビジネス環境は、いくつかの観点から厳しい逆風の中にあるといえる。2001年から12年間にわたってITRが実施している「IT投資動向調査」においても、2009年以降ユーザー企業におけるIT投資の低成長が続いている(図1)。これは、世界的不況の影響でユーザー企業におけるコスト削減圧力が強まったことによるものであるが、その後も投資や経費に対する企業の厳しい姿勢は緩和されていない。

図1 国内企業におけるIT投資増減指数の経年推移(出典:ITR 「IT投資動向調査2013」 ※回答数:627社、縦軸の投資増減指数は、20%以上の減少を−20、横ばいを0、20%未満の増加を+10などとして積み上げて回答数で除した値) 図1 国内企業におけるIT投資増減指数の経年推移(出典:ITR 「IT投資動向調査2013」 ※回答数:627社、縦軸の投資増減指数は、20%以上の減少を−20、横ばいを0、20%未満の増加を+10などとして積み上げて回答数で除した値)

 この間ユーザー企業のIT部門では、新規プロジェクトの延期や縮小による投資抑制を行ったことに加えて、既存システムの維持運用など定常費用の削減に取り組んできた。2012年末からのアベノミクスによる景気回復への期待感と株価上昇は、企業収益の改善にプラス効果をもたらす可能性があるものの、業績の回復がそのままIT投資の増加につながることは考えにくい。一度締まったユーザー企業の財布のひもは簡単には緩まず、2007年以前の高水準なIT投資の増加傾向を望むことはできないと考えるべきであろう。そのため、ユーザー企業はSI企業へシステム構築や運用業務の委託を発注する際に、これまで以上に見積もり根拠の妥当性やSE単価への説明責任をより厳しく問うこととなるだろう。

 もう1つ昨今のユーザー企業の投資姿勢において見逃すことのできないのが、グローバル化への対応である。飽和感のある国内市場に比べて成長著しい新興国への進出は経営戦略として重要なテーマであり、今後、国内企業において売上高の海外比率が高まることが予想される。

 これに伴ってIT予算の投下先も海外に流出する懸念が大きいと考えられる。その発注先としてグローバルなサポート体制を持つ大手の多国籍ITベンダーや、各国の法制度や商習慣を踏まえたきめ細かな対応ができる現地ベンダーが有力となり、国内のみをビジネス領域としてきたSI企業は劣勢にならざるを得ない。前述のITRの調査では、海外拠点を持つ企業における国外売上比率の平均は既に31%に上っており、これを追いかけるようにIT予算の国外配分比率は24%となっている。つまり、海外拠点を持つ国内ユーザー企業の予算の約4分の1は既に海外に投下されており、この比率は今後ますます増加することが予想されるのである。

 さらにもう1つ、SI企業を取り巻くビジネス環境の変化において重要なトレンドが、クラウドコンピューティングの台頭である。ITRの調査によると、現時点でビジネス系システムおよび会計・人事系システムのクラウド移行を実施している企業は1割前後だが、3年後の計画まで含めるとビジネス系システムで42.6%、会計・人事系システムで28.7%と、いずれも大きな伸びが期待される。

 大きな初期投資を必要とするオンプレミス型のITインフラ構築や、多大な時間と労力を費やすアプリケーションのスクラッチ開発は、これまでSI企業にとって大きな収益源となっていた。ユーザー企業のクラウドへの関心の高まりは、依然として強いコスト抑制圧力に加えて、迅速なシステム展開、拡張・縮退への柔軟性、外部活用によるオフバランス効果などを背景としており、システム構築、運用形態の有力な選択肢として定着していくものと考えられる。

 言うまでもなく、すべてのアプリケーションがクラウドに移行することは考えにくく、スクラッチ開発がゼロになるわけではないが、SI企業にとって従来のようなSEの派遣・常駐ビジネスや受託開発ビジネスは岐路に立たされると言わざるを得ない。

 これまで述べてきたように「コスト抑制圧力」「グローバル化」「クラウドの台頭」はSI企業にとって三重苦となっている。これを乗り越えて成長していくためには、従来型のビジネスモデルを打破した取り組みが求められるのだ。

 後編では、具体的にSI企業が今後も生き残っていくための施策や役割の変化などを検討していく。

著者プロフィール

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内山悟志(うちやま さとし)

株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト

大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。


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