顧客の声からの洞察をアクションにつなぐソーシャル・テクノロジー【前編】

ソーシャルメディアの急速な浸透は、コンシューマー市場だけでなくビジネスにおいても、その影響力を強めている。特に、顧客の声を収集/分析することにより得られた洞察を、より高度なマーケティングやサポートに活用するために、ソーシャル・テクノロジーを活用しようという機運が高まっている。本稿では、これまでの広報活動やブランディングの先にあるソーシャル・テクノロジーの活用状況について述べる。

» 2013年04月19日 08時30分 公開
[三浦竜樹(ITR),ITmedia]

ソーシャル・テクノロジーが注目される背景

 ソーシャル・テクノロジーというと、多くの人が最初に思い浮かべるのは、TwitterやFacebookといったソーシャル・ネットワーク・サービス(以下SNS)であろう。ソーシャル・テクノロジーには明確な定義はなく、その概念や範囲は広範にわたるが、定義するとすれば、「主にインターネットを通じて利用される、不特定多数のユーザーが他のユーザーとつながりを持ち、情報の発信・共有などのコミュニケーションを行うこと、または、それを実現するための技術などの総称」といえよう。

 国内におけるソーシャル・テクノロジーおよびそれを利用したサービスの歴史を振り返ると、2005年のブログ、2006年の国内最大であったSNSであるmixi、2007年のセカンドライフ、2008年にYouTubeなどで拡大したバイラルビデオ、2010年のTwitter、2011年のFacebookとほぼ1年ごとにブームとなっている。

 この概念や範囲が多様なソーシャル・テクノロジーに関して、企業における利活用の目的も多岐にわたる。従来からのブログ、そして近年のTwitterやFacebook活用の目的には、広告・、宣伝・、販促、広報・、ブランディング、リスクやレピュテーション・マネジメント、商品開発・、サービス改善、顧客育成やカスタマーサポートなどがある。なお、ソーシャル・テクノロジーの企業活用という観点では、他にもSNSのコミュニケーション機能を社内コミュニケーション/コラボレーションに適用するという社内SNSにも再び注目が集まっている。

 本稿では便宜上、前述のTwitterやFacebookを利用した活用を「企業(Business)と消費者(Consumer)」間のソーシャル活用をB2Cソーシャル、社内コミュニケーション/コラボレーションに活用するものをB2Eソーシャルと呼ぶこととする。

社内コミュニケーションの課題とSNS

 B2Cソーシャルの活用は、主にTwitterやFacebookなど主要なソーシャルメディア上での広告、宣伝、販促、広報、ブランディングが目的となっており、ソーシャル・プロモーションやソーシャル・マーケティングと呼ばれる。ソーシャルメディア上では多くの消費者の意見が集まり、気になる商品やサービスとその購買/利用意向、使用感や満足度、さらには不満やトラブルに至る購買、消費サイクル上の体験が日常的に伝播し共感される。

 従来のテレビCMなど企業から消費者への一方的な広告宣伝においては、消費者は自分の好みや興味と合わなければ、その商品やサービスをより深く知る機会はなかったと言える。これは、インターネット時代においても大きくは変化せず、「詳しくはWebで」のフレーズに見られるように、興味を持った消費者のみがネットで検索して商品やサービスの詳細を知るというように、情報入手経路が拡大したに過ぎない。

 一方、ソーシャルメディアでは、友人/知人との結び付きが重視されており、彼らの発信する情報は企業やメディアが発信するものより共感されやすく、さらに他の友人/知人へ伝播されやすい。ただし、ソーシャルメディアは登録ユーザー数が膨大にならなくては、その効果は基本的には小さいと言える。

 こうした中、米国において2010年3月にFacebookがアクセス数でGoogleを抜き、米国で最もアクセス数の多いWebサイトになった(米国調査会社Hitwise社)。日本のFacebookの推定ユーザー数に関しては、Facebookの広告ツールを使ってアジア各国のFacebook推定ユーザー数を集計し月1回発表しているセレージャテクノロジー社が、2012年8月6日時点で1032万人と推定している。結果として、消費者の情報入手経路は、ソーシャルメディアの急速な普及により変化しており、企業はこれまでのペイドメディアへの広告出稿やWebサイトのSEO/SEM施策に注力するだけでなく、ソーシャルメディア上で話題となるコンテンツの提供が求められるようになっている。

著者プロフィール

三浦竜樹(みうら たつき)

株式会社アイ・ティ・アール(ITR) シニア・アナリスト

広告代理店にて、ITベンダーのマーケティング・プラン策定、ネットワーク関連システムの広告戦略などに携わる。2001年4月より現職。現在は、GtoBおよびB2B2Cポータルサイト策定プラン、コミュニケーション/コラボレーション基盤の刷新、モバイル・クラウド活用でのビジネス戦略やワークスタイル革新などのコンサルティングを手掛ける。近年は主に、モバイル、コラボレーション、コンテンツ管理、仮想化、クライアント運用管理、Web戦略などの分野を担当。


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