パブリックデータを活用した新たな街づくりクラウド ビフォア・アフター(1/3 ページ)

医療や教育などの社会問題の解決に向けて、パブリックデータの活用に注目が集まっている。われわれは多種多様かつ膨大なデータをいかに扱っていくべきだろうか。

» 2013年08月28日 08時00分 公開
[林雅之,ITmedia]

 医療や教育、老朽化するインフラ対策、電力需給への対応、地域活性化など、社会における課題が山積している。これらの社会課題を解決し社会インフラの高度化や新たな街づくりにつながるパブリックデータの活用のあり方について、注目が集まっている。

 パブリックデータとは、政府や自治体などが保有する行政情報、医療や教育データ、センサーデータやスマートメーターデータなど、行政機関や民間企業などが保有する公共性の高い社会基盤となるデータをここではパブリックデータと定義する。

行政機関の保有する行政データ

 政府や自治体などの公共機関が保有する行政データに関して、自治体の場合では、住民記録、国民年金などの「住民記録データ」や、個人住民税・固定資産税などの「税に関するデータ」、介護保健・後期高齢者医療・子育て支援医療・児童手当などの「医療・福祉データ」などがある。公共機関が保有する情報の多くは非公開のクローズドデータとなり、海外では「Public Sector Information」と呼ばれている。これらのデータがインターネットを通じて一般に公開され、二次利用が可能となれば、オープンデータの位置付けとなる。

 オープンデータとは、狭義では、政府や自治体などの公共機関がオープンに提供可能な行政データで、広義では、政府や自治体などの公共機関だけでなく民間事業者や個人などが提供する二次利用可能な公共性の高いデータのことを指す。政府や自治体が保有するオープンデータは、民間事業者が提供するオープンデータと区別するために、「オープンガバメントデータ」と呼ばれることもある。

医療・健康、教育、農業データ

 医療・健康、教育、農業などの公共性の高いデータにも注目が集まっている。これらのデータには、患者の健診・医療データなどの医療・健康データ、学校データや研究データなどの教育データ、農業データなどがある。例えば、農業データの活用では、農産物の生育において、気温、降水量、日照量などの気象条件や、土壌と肥料など農作物の生産環境が影響するため、センサーを農場に配置し、後述するセンサーデータを一定時間ごとに収集・蓄積する。さらに、スマートフォンやタブレット端末などを使い、農作業履歴の記録、管理、肥料の種類、使用量などの投入資材の管理、農作物の収穫量の記録などをデータ化する。

 これらのデータを活用することで、生産管理の見直しや生産環境の定量化を行い、ノウハウの共有や農作業における適切な手法を確立する。それによって、農産物の生産効率や農産物の品質向上にもつなげていくことができる。気象などに異常事態が発生した際にもリスク軽減につながると期待されている。

社会インフラを管理するためのリアルタイムデータ

 次に、社会インフラを管理するためのセンサーデータ、スマートメーターデータ、プローブデータといった非構造化データされたデータのリアルタイムデータについて見ていく。

センサーデータ

 社会基盤となる公共性の高いデータには、温度・湿度センサー、CO2・花粉センサーといった動的でリアルタイム性の高いストリームデータであるセンサーデータがある。センサーデータには、そのほかにも、加速度・振動センサー、湿度・温度センサー、水分・流量センサー、熱量センサー、濃度・粘度センサー、圧力センサー、ひずみセンサー、光(赤外線)センサー、磁気センサーなどがある。

 センサー技術とワイヤレスネットワークの進展により、ネットワークにつながる設備や機器が人間を介在せずに相互に情報交換を行う M2M (Machine to Machine) や IoT (Internet of Things) と呼ばれるサービスの利用がさまざまな分野で進んでいる。

 これらの大量のストリームデータを収集し、データを分析することによって、起きている事象をリアルタイムに把握し、農業や都市計画、環境対策、防災、資源管理、危機保全、気象・大気観測、医療、国土保全といった分野において、異常発生予測などの事象予測や新サービスの創出が期待できる。

 全国の橋や道路、水道といった社会インフラが一斉に寿命を迎える国土基盤ストックの維持管理や更新費用は今後増加を続け、2020年には約12兆円になると予測されている。センサーデータを用いて効率的にインフラの維持管理を行うことが期待されているのだ。

スマートメーターデータ

 家庭内の通信機能を持ったスマートメーター(次世代電力計)がネットワーク経由で電力会社のセンターと接続することによって、使用電力の見える化などを実現するスマートグリッド(次世代送電網)も注目されている。スマートメーターは、各家庭に設置された通信機能を備えた電力メーターで、使用電力量の見える化や電力制御ができる。スマートメーターは通信機能を備えており、電力会社側に使用電力量のデータを一定時間ごとに送信でき、そのデータを消費者が閲覧することができる。

プローブデータ

 走行中の自動車の位置や速度などのデータである運行情報(プローブデータ)をカーナビなどの車載端末からクラウドを通じて蓄積、解析することで、渋滞や混雑情報のほか、ワイパーから天候情報、ブレーキから渋滞や燃費情報などさまざまな情報を収集できる。これらの自動車の移動情報を分析し、例えば、おすすめの店舗の案内や、近くの充電スタンドを案内するといったことができるようになるなど、走行支援をするサービスが提供されている。

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