脅威に先手を、「モノのインターネット時代」に向けたセキュリティ始まるMcAfee FOCUS JAPAN 2013 Report

あらゆるモノがインターネットに接続させる時代が近づきつつある。セキュリティ専業のMcAfeeは、Intelとの共同戦線でこれからの社会に予想される脅威に立ち向かうと宣言した。

» 2013年10月31日 19時45分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 セキュリティ専業のMcAfeeがIntelのグループ企業となって3年近くが経過した。当初は、半導体の巨人がセキュリティソフト企業と手を組むという戦略に違和感を覚えたIT業界の関係者も少なくなかっただろう。McAfeeが10月31日に開催した年次カンファレンス「McAfee FOCUS Japan 2013」では、IntelとMcAfeeによるセキュリティ戦略の方向性が改めて強く打ち出された。

McAfee バイスチェアマン トッド・ゲブハード氏

 「日本はMcAfeeのビジネス全体の1割を占める、米国以外では最大の市場だ。モバイルセキュリティの取り組みも日本からスタートした」。基調講演に登壇したMcAfee バイスチェアマンのトッド・ゲブハード氏は、同社における日本市場の重要性についてこう切り出した。

 例えば、モバイルセキュリティではNTTドコモのフィーチャフォンに古くから同社のウイルス対策ソフトが実装されており、出荷台数は累計2億台規模という。スマホ時代の今もそれは変わらず、Android端末でも1000万台に同社のウイルス対策ソフトが搭載されている。

 日本でのエンタープライズ事業でも4割を政府関連のビジネスが占めるという。「われわれはコンシューマからエンタープライズまで日本とは長い時間をかけて深い関係を築いてきた。セキュリティ専業メーカーとして、これから到来する時代にも安心・安全を提供することが使命だ」とゲブハード氏は強調する。その背景には、「Internet of Things(モノのインターネット)」時代が到来するというIT業界の未来予測があり、IntelとMcAfeeの共同体制において、「モノづくり大国・ニッポン」との関係がいかに重要であるかを意識したメッセージであったようだ。

 「2020年には500億台のデバイスがインターネットに接続されるだろう。今、世界に40億のモバイルユーザーがいるが、サブスクリプション数は既に63億もある。モノのインターネット時代にはさまざまな価値が創造されると期待されるが、同時に守るべきものも増えていく。セキュリティのアプローチを変えていかなければならない」(同氏)

 現時点でも個人や組織を問わず、重要な情報資産が常に狙われ続け、盗まれている。さらに、ここ数年は国家も関与するスパイ行為やテロなどの破壊活動も現実化し始めた。発電所の制御システムを破壊して大規模停電を引き起こし、市民生活を混乱に陥れるという映画のような状況が実際に起こり得るともいわれる。

 「未来の可能性を守るという取り組みを一緒にやっていきたい」とゲブハード氏は語った。

McAfee シニアバイスプレジデント兼ネットワークセキュリティ ゼネラルマネージャー パット・カルフーン氏

 ゲブハード氏に続いて登壇したシニアバイスプレジデント ネットワークセキュリティ ゼネラルマネージャーのパット・カルフーン氏は、同社のこうしたビジョンのもとで提供される最新のセキュリティソリューションを紹介した。その1つが、企業や組織の情報資産をしつこく狙い続ける標的型サイバー攻撃への対策である。

 標的型サイバー攻撃では巧妙でさまざまな手口が幾つも使われる。ただ、基本的には「侵入」「バックドア(遠隔操作目的)」「偵察」「データの収集」「外部への送信」という5つのプロセスで行われるという。対策ではその5つ全てに着目する必要があるものの、攻撃側は巧妙な手口を使って侵入するため、狙われる側が検知するのは難しい。既に気付いた時には大量の情報が流出するといった深刻な被害に見舞われているケースが少なくない。

 同日に製品発表も行われた「McAfee Advanced Threat Defense」(関連記事)は、カルフーン氏によれば、複数の解析技術を効率的に用いることで、侵入を試みる巧妙なマルウェアの検知を可能にした。「Intelと協力し、高度で複雑な解析処理に伴うシステムリソースへの影響を最小限にしている」という。

 また、脅威の侵入を検知することに加えて、既に潜んでいる脅威をログ情報などの相関分析から可視化する「セキュリティインシデント・イベント管理(SIEM)」ソリューションも強化するといい、サーバやPCなどのエンドポイントの情報も分析に用いることで、より正確な脅威の可視化を実現していく計画としている。

10月でインテルを退任する前代表取締役社長の吉田和正氏

 基調講演の最後は、10月にインテルの代表取締役社長を退任した吉田和正氏が登壇した。就任直後となる2003年のCentrinoプロセッサを皮切りに、企業が求める管理性やセキュリティを取り入れたvProプロセッサ、さらには省電力性と高効率性を両立させたCoreプロセッサまで、吉田氏にとってインテルでの仕事は、モバイルインターネット時代の変化とは切っても切り離せないものであったようだ。

 Intelは9月に発表したQuarkプロセッサファミリーを「Internet of Things」時代に向けた基盤に位置付ける。吉田氏は、特にセキュリティについて触れ、「Internet of Thingsの実現には安心・安全が必須」と語った。詳細には言及しなかったが、Quarkプロセッサファミリーに組み込まれるセキュリティ対策には、McAfeeのソフトウェア技術が多数実装されているという。

 吉田氏は、「セキュリティ無くして、新しい世界の創造と成長はあり得ない。これが最後のメッセージ」と講演を締めくくった。

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