社会を支えるセキュリティの役割が増す――トレンドマイクロ 大三川副社長2014年 新春インタビュー特集

サイバーリスクに対する社会的な認知が高まる中で、セキュリティ大手のトレンドマイクロはどのような取り組みを進めるのか――。取締役副社長の大三川彰彦氏に話を聞く。

» 2014年01月16日 08時00分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]

―― ビジネスにおいて2013年はどのような1年でしたか。

大三川氏 トレンドマイクロ取締役副社長の大三川彰彦氏

大三川 2013年は当社にとって創業25周年の記念すべき年でした。この25年間に当社は、セキュリティのエキスパートとしてデジタル情報を安全に交換できる社会の実現に取り組んできましたが、その知見や経験がこれまで以上に必要とされる時代が始まったと感じています。

 われわれは「3つのC」、クラウドおよび仮想化、サイバー攻撃、コンシューマライゼーションを切り口として、情報にまつわるリスクに着目し、ソリューションを提供してきました。以前から(ネットワークの)入口対策や出口対策の重要性が指摘されますが、今ではそれらを含めて複合的にセキュリティ対策を講じなくてはなりませんし、対策に必要な情報を得るための基盤も、問題解決策を提供することも不可欠です。

 クラウドおよび仮想化ではVMwareやAmazon Web Servicesなどとの協業をさらに強化し、コンシューマライゼーションでは安全で利便性の高いファイル共有を実現する企業向けファイル共有ソリューションも発表しました。

 特にサイバー攻撃の対策では「カスタム ディフェンス」というコンセプトのもと、3年前から個々の企業や組織に応じて仕組まれる高度な攻撃に対し、「検知・分析・適応・対処」のサイクルによって個々の企業や組織に最適化した防御を提供する複合的なソリューションの提供に取り組んできました。2013年は大手企業や官公庁のお客様を中心に、本格導入が始まりました。標的型サイバー攻撃対策製品である「Deep Discovery」は広島県庁や沖縄県教育委員会をはじめとする多くの企業や組織で採用されたことは、2013年の大きな成果の一つです。

 ただし、当社だけで全ての対策を提供できるわけではありません。また、標的型攻撃は一部の大企業や公的機関だけが狙われるという認識がまだ根深いのも事実です。リスクを感じていても対策のアプローチが分からないというところもあります。われわれはパートナー企業や世界のセキュリティ機関などとの連携を通じ、お客様にとって最適なソリューションを提供していける充実した体制づくりにも取り組んでいます。

―― 2014年のセキュリティビジネスではどのような点に注目し、取り組まれますか。

大三川 セキュリティの専門家として引き続き、最先端のセキュリティ技術を開発し、お客様の環境を守るソリューションの提供に注力していきます。今ではさまざまなツールや技術がありますが、万一の際にどう行動すれば良いか、処方箋はあるのかといったことも含めて対応できる存在はあまりいないでしょう。その点でトレンドマイクロは、この25年間にお客様の安全を支える新しいソリューションを先駆けて提供してきました。

 そうしたソリューションの礎に「Trend Micro Smart Protection Network(SPN)」という技術基盤があり、2014年はこれを強化します。SPNは、世界中から収集した脅威に関連する大量のデータを共有・分析し、独自のクラウド技術と分析手法を駆使してソリューションを物理や仮想、クラウド、モバイルといった環境にクラウドから提供しています。

 2014年は、SDN(Software Defined Network)やSDDC(Software Defined Data Center)といったソフトウェア定義型のコントロールやIoE(Internet of Everything)も大いに注目されるでしょう。クラウドや仮想化といった領域ではわれわれは、SPNを巨大なデータセンター上でSPNを運用しており、データセンターや仮想化環境における技術の検証や実験にも取り組んでいますし、セキュリティの課題も見つけることができるわけです。これから企業に広がるであろうハイブリッドなIT環境に求められるセキュリティモデルとは何かといったことも提示できると考えています。

 IoEではあらゆるものが情報をインプット・アウトプットするようになり、インターネットを通じて情報を集約・活用する仕組みも登場します。家庭にはネット接続環境がありますが、これからはもっと多くのものがつながり、ユーザーはそうしたことを意識せずに利用するようになります。IoEによってそれが社会全体に広がっていきます。それに応じてセキュリティの脅威も拡大するでしょう。

 つまり、いろいろなところに混乱を引き起こす因子が存在するということになります。それをだれが守るのかという点はありますが、少なくても混乱が起きないために脅威を監視していく必要はあります。また、多くのネット接続機器に管理ツールが付属していますが、ユーザーが意識しなければ使われませんし、パッチを適用するということすら忘れられてしまいがちです。それが社会全体に広がると、いったいどうなるでしょうか。

 このように、セキュリティの脅威に備えるために必要なことがあらゆるところに広がっています。セキュリティの専門家には今まで以上にその役割が高まっていくでしょう。

―― マネジメントでの心構えや2014年の抱負をお聞かせください。

大三川 当社はチャレンジ精神を大事にしています。失敗しても、チャレンジすることで成長につながりますから、新しいもの・ことをもっとスピーディーにキャッチし、全社員でチャレンジして、成長していきたいですね。そして、われわれのミッションを通じて社会にも貢献し、そのことに誇りにして活躍してほしいですね。

 トレンドマイクロは日本を中心にグローバル展開している企業です。ですので、日本からグローバルに進出されるお客様やパートナーとグローバル市場でご一緒にしたいと思います。

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