IBMのx86サーバ事業を買収したLenovoの対HP、Dell戦略を読むComputer Weekly

IBMのPC部門に続き、同社のx86サーバ事業を買収したLenovo。x86サーバ市場の覇権を確立するため、Lenovoは次にどう動くのか? ライバルであるHPやDellを攻略する戦略とは?

» 2014年03月06日 08時00分 公開
[Cliff Saran,ITmedia]
Computer Weekly

 米HPを意識した中国Lenovoの進撃が始まっている。米IBMのx86事業を約26億ドルで買収したLenovoは、サーバ製品の価格を強気に設定して顧客獲得を目指す気配だ。

 Lenovoのヤン・ユワンチン会長兼CEOは次のように語る。「正しい戦略と優れた行動力、絶えることないイノベーションとx86事業への明確な姿勢があれば、この事業を長期にわたってうまく成長させていくことができる。このことはPC事業で全世界に実証済みだ」 PC市場でLenovoはHPと首位の座を争う世界最大のPCメーカーとなっている。米調査会社のGartnerの調査によると、2013年第4四半期のPC市場のシェアはLenovoが18.1%で首位に立ち、HPが16.4%、米Dellが11.8%と続いている。

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 Gartnerは、2013年12月発行のLenovoブランドの強度指数についての報告書に次のように記している。「LenovoはIBMのPC事業部門(PCD)を買収したことで、プロ仕様PCでは最高のR&Dチームを手に入れた。LenovoはこのR&Dチームの強みを生かし、企業のニーズを満たす革新的なクライアントデバイスを発表している。商用PC分野でのテクノロジーイノベーションは、Lenovoブランドのイメージを確実に高めている」

 Computer Weeklyの姉妹誌MicroScopeが以前報告したように、Lenovoはサーバ事業の拡大を画策している。IBMのx86サーバ事業買収は、Lenovoの信頼性を高め、PCサーバ市場への足固めになるだろう。しかし、IBMは2013年第4四半期にサーバ出荷台数の大幅減(2012年比37%減)を経験したとGartnerは見ている。

Lenovoはサーバの低価格競争を画策

 Lenovoはこの買収により市場のライバル(特にHPやDell)を低価格競争に巻きこみ、PC市場での成功を再現しようともくろんでいる。

 Gartnerのアナリスト、エロール・ラジット氏は、「Lenovoには、IBMのサーバ事業モデルの効率を上げ、利幅を増やし、価格競争力を高めるチャンスがある。その上、台湾Quanta Computerや台湾Wywinnなど、オリジナルデザインのメーカーとも競争できる低コスト製品を提供できる」と語る。

 同氏は、FacebookのOpen Compute Platformや中国AlibabaのProject Scorpioを引き合いに出し、Lenovoはスケールアウトデータセンターの設計を目的とするオープンソースハードウェアを目指す可能性があると指摘。そうすることでオープンソースデータセンターハードウェアを構築、販売し、大手サプライヤーに対して価格の優位性を維持できると見ている。

 「市場にはこの種のモデルに対する強い要求があり、低価格で提供しても独自性を打ち出せないことがLenovoの課題だ」とも同氏は語る。

IBMとのパートナーシップがLenovoの強み

 一方、この買収はLenovoがIBMのアプライアンス戦略の推進役を担うことを意味する。x86サーバ事業の買収により、LenovoとIBMは戦略的パートナーシップの締結を画策している。このパートナーシップには、全世界での製造と販売の契約が含まれている。LenovoはIBMのエントリレベルのミッドレンジ向けStorwizeディスクストレージシステム、テープストレージシステム、General Parallel File Systemソフトウェア、SmartCloud Entryサービスに加え、IBMシステムソフトウェアポートフォリオに含まれるSystems Director製品やPlatform Computing製品などを販売する予定だ。

 IDCヨーロッパのサーバ調査部長、ジョルジオ・ネブロニ氏は次のように述べている。「今回の取引にPureSystemsやブレードなどの統合ソリューションが含まれることは、大口顧客の中でさえLenovoの注目度が高まる。これまでは、こうしたソリューションの全てが台湾AcerやLenovo自体も含めたアジア企業による市場シェア拡大や関係性拡大を阻む大きな溝となっていた」

 「IBMのPC事業をはじめ、買収した事業を育て上げてきたLenovoの実績を考えれば、Dell、HPなどのライバル企業にとっては、これまでIBMがそれほど力を入れてこなかったSMB環境での競争が激化する可能性がある」

 IBM System xサーバ、PureSystems、Power Systems、System zシリーズといったメインフレームを運用する大口顧客をサポートするためには、LenovoはIBMに協力を仰ぐ必要があると同氏は語る。

 「IBMはブレード環境の中でPower Systemsをベースにする部分だけを保有することになる。しかしこのことによって、現状x86ブレードとPower Systemsを併用する顧客、System zメインフレーム環境を使用する顧客、さらにはストレージブロックを使用する顧客でさえ、Lenovoとの長期にわたる共同作業が必要になる。つまり、IBMは自社のポートフォリオにこれらを含めておくことになる」

 大口顧客以外に向けて、Lenovoは既に自社のSMBパートナープログラムを構築している。MicroScopeの報告によると、Lenovoは前年のヨーロッパ事業の95%をパートナーを通じて行っており、パートナーによる売り上げは15億ユーロ(12億ポンド)に達している。同社はパートナーと連携してSMB市場のシェアを拡大している。

Lenovoに有利

 IBMのx86事業買収は、Lenovoの企業資質の証明に役立っている。IBMとのパートナーシップの継続で、IBMのソフトウェア製品やストレージ製品を統合するアプライアンスの提供が可能になる。

 PC市場でのLenovoの影響力を考えると、サーバ分野の価格を押し下げ、これまでサーバ市場をリードしてきたHPやDellに打撃を与えることになると思われる。DellとHPがOpen Compute Projectにスポンサーとして参加することや、IntelがスポンサーとなるProject Scorpioの信頼性を高める可能性もある。

 最後に、米国国家安全保障局(NSA)が消費者や企業をスパイし、米国IT企業に顧客データの引渡しを強制していた事実はLenovoに有利に働く可能性がある。

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