【第3話】真夜中のジョブ再実行その日、私の仕事はなくなりました 〜僕の業務システム改善日記〜(2/4 ページ)

» 2014年04月23日 08時00分 公開
[谷口有近(シロッコ情報技術研究所),ITmedia]

運用のプロの仕事って何だ…?

 チトセの計画はこうだ。まずは不正なデータを正すために一連のジョブを再実行したい。だから入力時間と入力者を識別するフィールドから推測したデータを丸ごと待避し、削除する。並行してジョブの実行環境のメンテナンスやリスタートを行う。残っているプロセスが悪さをしている可能性があるので順次確認しながらkillしていくのだが、その後、不要なトラブルを避けて一発で復旧させるためにリスタートする。最後に、文字コード不正が確認されている取り込みファイルを修正して配置し、再実行する。

 しかしこのままでは、一連の取り込みジョブの実行中に深夜0時を回ってしまうことが、ほぼ確実になる。だから、その前に後続のジョブを保留させ、停止状態で日替わりを待つ。日替わりした後、残った取り込みジョブを再開するのだが、実行時にデバッグ用のパラメータを与えて、日付と時間を操作するのだという。

 「日跨ぎの計算が甘いなんて恥ずかしい話ですよね。本当に申し訳ないです」

 謝られたケンイチは、チトセの言っている意味が正直分からなかった。ジョブの運用の話ではない。助けてもらっているのに謝られている。そして何より謝っている内容だ。計算が甘いのが恥ずかしいという話だが、「何が甘いのかさっぱり分からない。何が恥ずかしいのですか?」と思わず聞き返してしまった。

 「乱暴な言い方ですが、仮に仕様書に要件が書いてなかったとしても、バッチ処理目的のプログラムで日跨ぎができないようなコードを書いてしまうというのは、アドホックなスクリプト運用ならともかく、納品するプログラムとしては恥ずかしいことです。お金をいただいているプロとしては

 そうなんですか、とケンイチはとりあえず分かったようなことを言ってはみたのだが、いまいちその感覚が理解できなかった。プロとしての仕事。自分はこれまでそんなことを考えてこなかった。プロとしての運用の仕事って何だろう。ミスを全く起こさないことなのだろうか。作業予定を書きながら口に出して確認しているチトセの言葉が遠くなる。

 「では、この手順で作業を開始しましょう。気になることはありますか?」

 「あ、…はい。やりましょう」

 「作業中、気になることが少しでもあれば、共有しましょうね」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ