ハイブリッドクラウドを進めるHP、新ブランドやOpenStack関連施策を発表

クラウド事業でハイブリッドが主流になるとみるHPは、新たに「HP Helion」ブランドを立ち上げ、OpenStackを中核とする各種施策をさらに強化した。

» 2014年05月21日 14時46分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米Hewlett-Packard(HP)は、クラウドコンピューティングの主流がオンプレミスやプライベート、パブリックなどのサービスを組み合わせたハイブリッド型になるとして、2011年から「Converged Cloud」戦略を展開してきた。同社は米国時間の5月7日、この戦略を加速させるために新ブランド「HP Helion」や、OpenStack関連の新たな施策を発表した。

ハイブリッドクラウド戦略を展開する理由

 これを受けて日本HPは21日、米国での発表内容や日本における取り組みについて説明。特に国内では今後1年半以内に、東京のデータセンターからパブリッククラウドサービスの提供を始める(顧客企業が専有的にサービスを利用できるマネージドサービスは提供済み)。

 HP Helionは、同社のクラウド関連製品・サービスを総称するブランドとの位置付けだ。日本HP クラウド営業統括本部長の松浪幹生氏は、「新ブランドは『ヘリウムイオン』とギリシャ神話の太陽神『ヘリオス』を掛け合わせた言葉。つまり、ITをつなぐ役割をHPが普遍的に担うというメッセージを込めている」と述べた。

新ブランドとポートフォリオ

 新施策として同社は、(1)「HP Helion OpenStack」の提供、(2)OpenStack補償プログラムの新設、(3)OpenStackのプロフェッショナルサービスの提供――を計画し、これらに今後2年間で10億ドル以上を投資するという。

 (1)のHP Helion OpenStackは、これまで「HP Cloud OS」と呼んでいたOpenStackのディストリビューションで、同社がハードウェアと組み合わせて提供する統合型システム製品の基盤ソフトウェアになっていた。今回はこのソフトウェアが無償のコミュニティ版、有償のエンタープライズ版およびサービスプロバイダー版の3種類で提供される。

 コミュニティ版は検証や物理サーバ30台程度までの小規模環境で利用できるとし、6週間ごとのリリースサイクルを予定。現在はプレビューで、6月の同社カンファレンスで正式版が公開される見込み。有償版も6月のカンファレンスでプレビューリリースされ、8月から正式版を提供する。物理サーバ1000台以上の大規模環境での利用に適しており、同社が強みとするさまざまな運用管理機能が追加されるという。

 補償プログラムは、OpenStackのコード単体やLinuxコードとの組み合わせに関する他社の特許権や著作権などから同社がユーザーを保護する。プロフェッショナルサービスではHelion OpenStackの導入から運用までの全体をサポートするとしている。

 パブリッククラウドサービスは、これまで北米中心でIaaSのサービスを提供してきたが、今後は東京を含むアジア太平洋、欧州に提供体制を広げる。また、2014年夏以降にはPaaSサービス「HP Helion Development Platform」もスタートさせるという。同サービスはオープンソースのCloud Foundryをベースとし、OpenStackとの連携もうたう。

 PaaSでは、既にIBMがIaaSのSoftLayerと組み合わせた「BlueMix」サービス(現在はβ版)の本格展開を始めつつある状況だ。これついてHP エグゼクティブ クラウドチーフテクノロジストの真壁徹氏は、「IBMが先行しているのは事実だが、まだこれから。今後主流になるのは間違いなく、現時点でHPとしても準備に着手したということ」と述べている。

 今回の一連の発表は、同社のハイブリッドクラウド戦略の延長上にあるものと位置付けられる。真壁氏は、同社自身がこの戦略の体現者だとして、次のように説明した。

 「当然だか、HPにもクラウド移行の難しいERPがあり、社内向けクラウドやSaleforceを始めとする外部サービスも利用している。開発基盤は2013年に年数億円の利用料を支払っていた外部サービスから自社PaaSに完全移行し、コスト削減や運用効率の改善を果たした。われわれはこうした変化を率先して行っている」(真壁氏)

HP自体がハイブリッドクラウドでビジネスをしている“体現者”という

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