IoTとビッグデータがもたらす社会変革とクラウドセキュリティビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/2 ページ)

今回はInternet of Things(モノのインターネット)やビッグデータの特徴をひも解きつつ、社会に与える影響とセキュリティ上の課題を提起していく。

» 2014年05月29日 07時30分 公開
[笹原英司ITmedia]

ビッグデータ戦略の有望領域として注目を集める「Internet of Things」

 2014年5月1日に米国ホワイトハウスが公表した「BIG DATA: SEIZING OPPORTUNITIES, PRESERVING VALUES(関連PDF)」では、新しいビッグデータのソースとして「Internet of Things(IoT)」を取り上げている。

 同報告書によると、「固定系/無線系ネットワークを介して接続された組み込みセンサを利用し、相互に通信するためのデバイスの機能」をIoTと称している。IoTの対象デバイスには、温度計、自動車、デジタル錠剤などが含まれ、接続されたデバイスはデータを転送、集約、分析するためにインターネットを利用するのが特徴だ。

 IoTは、我々の身近なところではビッグデータと縁遠い存在にみえるものの、一度弾みがつくと、ビッグデータに画期的なイノベーションをもたらす起爆剤的な役割が期待されている。下記の図は、構成データの種類(構造化/半構造化/非構造化データ)およびデータ処理の時間(バッチ処理/準リアルタイム処理/リアルタイム処理)の2つの軸から、ビッグデータを整理してマッピングしたものである。

図・データの種類(Variety)/速度(Velocity)からみたビッグデータのマッピング例、出典:日本クラウドセキュリティアライアンス・ビッグデータユーザーワーキンググループ(2014年5月)

 IoTにかかわるデータの種類(Variety)をみると、温度計、スマートメーター、血圧計など、センサ組み込み機器・設備からインターネットを介して収集されるデータの大半は、構造化データと半構造化データが重なり合う複合的な半構造化データに位置付けられる。

 一方、データの容量(Volume)では個々のデバイス単位で生成されるデータの容量はそれほど大きくないが、センサ機能を持った設備・機器は無数に存在するため、一度IoTを介してつながると、膨大な容量のデータが蓄積される。データの速度(Velocity)も、センサ自体は24時間/365日データを発信するが、実際にはある程度データが収集された時点で、バッチ処理をベースに分析が行われるケースが多い。

 しかしながら、センサデータがソーシャルネットワーキングサービス、電子商取引システム、顧客情報管理システムなどリアルタイム処理を前提とするその他のデータと連携を強めていくと、IoTを介したデータ分析のライフサイクルもリアルタイムへとシフトすることになる。

IoTで加速する最適化、個人レベルから社会レベルへ

 電気自動車(EV)/プラグインハイブリッド車(PHV)に代表される自動車業界では電子化/IT化が進行している。車載機器のセンサデータとGPSなどの位置情報の組み合わせによって生成されたローデータを収集・加工・分析し、個々の運転者の関心に合った情報を提供するモバイルアプリケーションサービスの開発が行われてきた。

 スマートシティのプロジェクトでは個人レベルでの最適化のために、IoTを介して生成したデータを集約し、さらに、社会全体の最適化の観点から、例えば、交通渋滞解消のためのシミュレーション、道路補修計画の策定支援といった、都市が抱える課題解決に向けてビッグデータ利活用の取り組みが行われている。

 また、健康医療の分野では臨床現場の医療機器にセンサが組み込まれ、心拍数、呼吸、血圧、体温に代表されるバイタルサインを常時モニタリングしながら診療を支援したり、医療安全対策を補完したりする機能が利用されてきた。これがIoTを介して、電子カルテや地域医療連携システムとのネットワーク連携が可能になり、ビッグデータ利活用の場も、医療施設内の病棟診療から外来診療、在宅診療へと拡大しつつある。

 さらに、人口の高齢化に伴う医療費の急増が世界各国・地域共通の問題となり、対処療法から予防療法へのシフトが叫ばれる中で、スマートフォン/タブレットのセンサ機能を利用したモバイルフィットネスアプリケーション(例:Apple Healthbook)やスマートグラス(例:Google Glass)、スマートウォッチ(Apple iWatch、Samsung Galaxy Gearなど)に代表されるウェアラブルデバイスを利用した健康増進活動が本格化しつつある。個人レベルのバイタルサインや運動、食事に関連するローデータを集約して、地域社会レベルの予防医療/予防介護や健康水準の向上にビッグデータ分析技術を役立てようという動きにつながろうとしている。

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