ボストンに学ぶ市民参加型コミュニティの管理と人材の役割ビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/3 ページ)

市民主体の「シビックテック(Civic Tech)」を活用する自治体にとって悩みの種は、コミュニティの活性化と安定的な運用管理の両立だろう。米国の古都であると同時に新しい起業家を輩出し続けるボストンの取り組みとはどのようなものだろうか。

» 2014年10月14日 08時00分 公開
[笹原英司ITmedia]

編集部より:今回より連載タイトルを「ビッグデータ活用と問題解決のいま」としてお届けします。ビッグデータの利活用とそれを取り巻く課題の解決における動向を筆者が解説していきます。

産学官連携と市民参加が牽引するボストンの地域課題解決型スマートシティ

 前回取り上げたシカゴと並んで、市民参加とオープンデータ/ビッグデータで地域課題解決型スマートシティに取り組んでいる都市が、マサチューセッツ州のボストンである。

 ボストンは札幌とほぼ同じ緯度に位置し、「ウォーキングシティ」と呼ばれる位の規模のコンパクトな街である。そこに、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、ボストン大学、タフツ大学、マサチューセッツ大学、ノースイースタン大学、エモリ―大学、バークリー音楽大学院など、様々な学問領域の高等教育・研究機関が集積し、リアルおよびバーチャルの両面で、技術や人材の交流が行われている。

 例えば健康医療の分野では2014年5月13日、ボストン地域でバイオ・ライフサイエンス関連の教育・研究機関やベンチャー企業が集中する地下鉄レッドライン沿線の5自治体(ケンブリッジ市、ボストン市、クインシー市、サマービル市、ブレインツリー市)が共同で、ライフサイエンス技術の事業化/商用化による地域経済発展を目標とする「ライフサイエンス・コリドール」計画を発表した(ボストン市プレスリリース参照)。

 現在、この地域には約500のライフサイエンス関連企業があり、その3分の2はMITやハーバード大学があるケンブリッジ市に集中している。しかしながらケンブリッジ市内の地価が高騰し、ベンチャー企業が入居可能なスペースの供給に限界が出てきたことから、公共交通網を軸とするボストン広域の産業クラスターを再構築する計画が生まれてきた。各自治体の頭にあるのは、カリフォルニア州やノースカロライナ州のバイオクラスターとの激しい競争である。

 また、ICT利活用の分野では2014年9月23日、ボストン大学コンピューティング&計算科学・工学ラフィク・ハリリ研究所を主体とする産学官連携コンソーシアムが、米国国立科学財団(NSF)の助成金を受けて、交通・モビリティ、環境・エネルギー、安全・安心、公共資産管理、公共サービスなど、様々な都市機能の集約・強化を目的としたクラウドベースのオープンなスマートシティICT基盤「SCOPE(Smart-city Cloud-based Open Platform & Eco-system)」を構築する計画を発表している。

SCOPE ボストンのSCOPE計画

 スマートシティ先進都市のボストンでは都市交通、再生可能エネルギー、公共安全、住民サービスなど、個別領域ごとに情報システムが構築・運用されてきたが、今後は、標準化、効率化、迅速化など、クラウドサービスならではのメリットを課題解決に有効活用することを目的とした統合プロジェクトへとシフトしつつある。

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