セキュリティ/リスク管理から見た米国のオープンデータ戦略ビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/3 ページ)

米国が推進するオープンガバメント政策では、データの利活用において国民の参加を促す仕組みを取り入れ、同時に浮上するプライバシー/セキュリティの課題にも具体的な対応を図っている。同国はこのテーマにどう取り組んできたのか――。

» 2014年07月02日 08時00分 公開
[笹原英司ITmedia]

ソーシャルメディアとビッグデータはオープンガバメントの共通基盤

 米国のオバマ大統領は、2008年の大統領選挙でソーシャルメディアをフル稼働して勝利し、2012年の大統領選挙ではビッグデータ分析を駆使して再選を果たしたことで知られている。このような経験/ノウハウは、公共部門のICT政策にも生かされている。

 オバマ大統領は就任式直後の2009年1月、連邦政府行政機関および各省庁長官にあてて、「透明性とオープンガバメント」と題する覚書を発表した。政府・政策・情報の透明性(transparency)、国民参加(participation)、官民連携(collaboration)の3つを基本原則として、透明で開かれた政府を実現する方針を打ち出した。

 注目されるのは、この方針を具体的な政策に落とし込む際、政府側が一方的に草案をとりまとめた上でパブリックコメントを募集するという手法ではなく、ソーシャルメディアの機能を利用しながら、各プロセスでオープンな合意形成・意思決定を行うという新しい手法を採用した点だ。

 第1段階(ブレインストーミング)では国立公共行政アカデミー(NAPA)が運営する意見募集ツール「IdeaScale」を利用して国民から広くアイデアを募った。第2段階(ディスカッション)では、大統領府科学技術政策局(OSTP)のブログを利用して議論を深めた。第3段階(ドラフティング)では、文書作成コラボレーションツール「mixedink」を利用して草案の策定作業を行った。その最終アウトプットが、同年12月に発表された「オープンガバメント指令」である。

 前回のコラムで、ソーシャルメディア利活用の成熟度モデルを取り上げた。

ソーシャルメディア利活用の成熟度モデル

ステージ1:一方向型の情報発信

ステージ2:双方向型の対話

ステージ3:オンラインコラボレーション

ステージ4:ステークホルダーエンゲージメント


 この手法のように、一方向型の情報発信からステークホルダーエンゲージメントへの発展をめざす方向性は、ソーシャルメディアを共通基盤とする米国のオープンガバメント政策の流れにも垣間見ることができる。

 また、ビッグデータの観点からオープンガバメントをみると、ソーシャルメディアの利活用が進むとともに、政府側の提供コンテンツに加えて国民が生成するコンテンツが増えていく。データ容量が増大し、構造化データに非構造化データが加わり、より迅速性が求められる分野の政策意思決定支援にデータ分析が活用されるという、ビッグデータの3V(Volume、Variety、Velocity)によるシナリオが展開されることになる。

 2012年の米国大統領選挙では、超並列処理(MPP)分析データベースと高度予測モデルを駆使したデータサイエンティストチームが、コミュニケーション/メディアチームによる選挙公報やフィールドチームによる有権者への働きかけをサポートしたことが話題になった。2度の大統領選挙で蓄積されたソーシャルメディアやビッグデータの利活用ノウハウが、オープンガバメント推進策にも大きな影響を及ぼしている点は興味深い。

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