モバイルワークとWi-Fi 米国の今と日本のこれから(後編)シリコンバレーの街角から(1/2 ページ)

無線LANを駆使してモバイルワークで仕事にいそしむ――そんな働き方が日本でも注目されていますが、思わぬ“落とし穴”も存在します。後編ではWi-Fi利用での具体的な危険性やその対策を解説します。

» 2014年06月26日 08時00分 公開
[河根拓文(AnchorFree),ITmedia]

Wi-Fi関連の事件簿

 前編ではWi-Fiが非常に便利な存在でありながらも、ユーザーは危険を認識しながら自己責任で利用しているという米国の実態について紹介しました。それでは、実際にどんな事件が世界で起きているのでしょうか。

Googleストリートカーのデータアクセス事件

 2013年、Googleは米国38州に計7億円もの賠償金を支払いました。これは、皆さんもご存知のストリートビューを作成するための車が、誤ってWi-Fi経由で個人情報を収集してしまっていたことが発覚したためです。Googleが収集したデータには、何とパスワードや銀行・病気に関する記録もあったようです。

FireSheep事件

 2010年頃、悪い意味で「一世を風靡(ふうび)した」のがFirefoxプラグインのFireSheepです。このプラグインを使えば、ほんの数クリックで同一アクセスポイントを利用している人がネット上で何をしているかが簡単にわかってしまいます。この脅威を受けて、多くのWebサイトがHTTPSという暗号化された通信プロトコルに変更しました。その後も次々とハッキングツールは進化を遂げており、例えば、ニューヨークの地下鉄の無料Wi-Fiにおいて個人情報を盗む実験が成功してしまいました※1

※1 NBCNY https://www.youtube.com/watch?v=XmA6YXh8zgo

カナダのスパイ事件

 カナダの政府機関であるCSEC(Communications Security Establishment Canada)が、あるスパイエージェンシーとともに空港のWi-Fiスポットの利用者を「尾行」していたことが明らかになりました。Wi-Fi利用中の情報を抜き取るだけでなく、なんと収集した端末情報から、旅行者がその後、どこにいつ移動したかをトッラキングしていたのです。

 またWi-Fi接続時だけに限ったものではありませんが、2013年の米国における個人情報漏えいの被害総額は1兆8000億円にも上り、被害者数は1300万人以上といわれています※2。18歳以上人口の18人に1人が被害に合っている計算になり、まさに「ダダ漏れ」状態だと言っても過言ではありません。

※2 Javelin Strategy & Research、https://www.javelinstrategy.com/news/1467/92/1

被害総額のチャート(出典:Javelin Strategy & Research)

 日本でも公共Wi-Fiの普及が進むにつれ、同様の問題が深刻化してくる可能性があります。

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