スマイルワークスが中小企業ユーザーを伸ばし続けるワケ田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

今年5月にヤフー子会社などから2億5000万円を調達して話題になったのが、クラウドビジネスで急成長を狙うスマイルワークスだ。

» 2014年07月10日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 「クラウドは、IT企業の役割を変えるとともに、新しいプレイヤーを誕生させる」。スマイルワークスの坂本恒之社長はIT産業の大きな変革を予想し、会計と販売、給与をまとめて管理するクラウド型業務ソフト「ClearWorks」の販売に力を注ぐ。

 社員数十人から数百人の中小企業をターゲットとする同製品のユーザーは6000社近くに達する(2014年6月上旬)。2015年10月に消費税率が再び改定されれば、利用者はこれまで以上に増加するとし、開発とサポート体制の拡充を進める。

1年間で1800社のユーザーを増やす

 坂本社長は、中小企業のIT支援を目的に、2003年7月にスマイルワークスを設立した。当初、CRM(顧客情報管理)やECなど売り上げ拡大に結び付くフロント系システムを中心にコンサルティングから手掛けていた。だが、フロント系は業種や業態によって要求が異なり、カスタマイズ作業がどうしても発生する。

 そこで、「広く展開できるサービスを考えた末、業務ソフトだ」(坂本社長)と思った。会計などの業務ソフトは業種に関係なく、必要な機能がほぼ共通している。カスタマイズもあまりない。そうした中で、あるソフト会社からClearWorksの事業を譲り受けた。クラウドに乗せ換えるとともに、2007年から本格的に売り出した。

 SaaS化したのは、パッケージソフトの提供よりも中小企業にメリットがあるからだ。1つは、煩わしいバージョンアップ対応が必要なくなること。法令改正などが毎年あり、そのたびに企業は新しい機能を追加したパッケージソフトをインストールする必要があるが、クラウドにすればそうした作業をせずに、常に最新版を利用できる。

 2つ目は、ハードウェアやソフトウェアを自前で調達し、運用・保守する人員を確保する必要がなくなること。利用料金も会計、販売、給与それぞれ月額3000円(すべてを使うと9000円)なので、「アセットが小さくなり、ROA(総資産利益率)が向上する」(坂本社長)。下げたコストは攻めの投資に振り向けられる。「コアの業務に経営資源をシフトさせられる」(同)。しかも、「バックアップやセキュリティの点からも、データセンターに預けるほうが安全だ」(同)。

 クラウドは中小企業にこのような恩恵をもたらす。結果、ユーザーはこの1年間で約1800社増えて、約5800社になったという。新規ユーザーの獲得に加えて、有力パッケージソフトを導入している中小企業からの乗り換え需要も数多くある。「2015年10月に消費税が10%にアップされれば、この1年以上に利用者が増えるだろう」(坂本社長)とし、開発やサポートの体制を強化する。リアルタイムに、いつでもどこからでも経営データが見えるようになれば、中小企業の経営インフラは強固になるはずだ。

クラウドが中小企業に勝機をもたらす

 そのため、スマイルワークスは増資に踏み切った。これまで坂本社長1人のプライベートカンパニーだったが、2014年5月にヤフー子会社・YJキャピタルとグロービス・キャピタル・パートナーズの2社から出資を受けた(第三者割当)。調達額は2億5000万円に上る。

 出資を仰いだのは、ヤフーやアスクルなどとの販売強化の狙いもある。会計士、税理士、社労士、ITコーディネータなど専門家とのネットワーク作りも築いていく。特に会計事務所との関係強化を模索する。その1つが2013年に石川県商工会連合会の会員に採用された実績を生かし、会計事務所などがより使いやすい機能にする計画だ。顧問企業と同じ環境になれば、会計事務所はリモートからデータを見られるため、「より付加価値の高いサービスを増やせる」(坂本社長)。

 顧客対応も拡充する。スマイルワークスでは電話やメールなどでユーザーからの問い合わせに応じているが、ユーザー数が拡大すれば、サポート要員を増やす必要がある。社員18人のうち6人(2014年6月上旬時点)のサポート要員を倍増させる計画だ。システムインテグレーターと協業するために、販売管理のAPIを公開し、カスタマイズや独自ソリューションを容易に開発できる環境も整備する計画である。

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