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» 2014年09月17日 10時00分 UPDATE

Computer Weekly:AmazonがMicrosoft化している5つの兆候

Microsoftはかつて、独占企業として競合企業の敵意を集めていた。今、かつてのMicrosoftのように市場を独占して警戒される存在になりつつあるのがAmazonだ。

[Janakiram MSV,ITmedia]
Computer Weekly

 米Amazonは、この10年間に何度もビジネス界の変革を起こしてきた、数少ない企業の1つだ。歩合制の委託売買業務や出版業界に革命を起こした電子書籍リーダーの開発など、同社は常に既存市場の破壊を狙った施策を実行してきた。

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 流通業界に革命を起こしたことだけでも称賛に値するが、そればかりではなく、ストレージや演算パワーをサービスとして広く一般に提供したことは、創設者ジェフ・ベゾス氏の見事な手腕の現れだ。現在、多くの有名企業がITインフラのバックボーンとしてAWSのS3とEC2を利用している。

 そこでAmazonの事業戦略を詳しく分析すると、1990年代半ばの米Microsoftの戦略を思い出させる点が多い。両社のビジネスモデルは異なっているし、市場の動き方も当時と今では随分違う。それでも、かつてのMicrosoftに代わってAmazonが業界の現在の覇者であることを示す兆候が5つある。

1.クラウドの独占

 ソフトウェア業界の中でMicrosoftが脅威と見られていたのは、同社が一時期、何もかも独占するというアプローチを実践していたからだ。その線で考えるなら、AWSは間違いなくクラウド市場を独占している。Microsoftは(Webブラウザの)IEをWindowsの一部として搭載(バンドル)して普及させる戦略を取ったが、AWSは他社が太刀打ちできないほどの大幅な値下げと広範なサービスポートフォリオを提供することに重点を置いている。

 顧客はこの値下げを評価するかもしれないが、業界全体としては同社に支配されることを脅威に感じている。米Rackspaceの社長テイラー・ローズ氏はごく最近、AWSが業界を混乱させていると認めた。クラウド界の価格戦争の結果、Rackspaceは従来のビジネスモデルを捨て、マネージドクラウドのプロバイダーとして再出発することを余儀なくされた。Amazonがクラウド市場に参入する前から活動していて、上場もしていたRackspaceに対してAWSがこれほどの影響を与えたとすれば、従来のデータセンター、コロケーション、ホスティングサービスなどのプロバイダーに対するAmazonの影響がいかに大きかったか、想像に難くない。

2.Windows vs. Linuxの対決再び

 1990年代、ソフトウェア業界の企業は、Microsoftに対抗するときに利用できそうな武器はLinuxとオープンソースのソフトウェアぐらいだと認識していた。当時は、米IBMから米Oracleに至るまで、名だたる企業がこぞってLinuxを支持し、エンタープライズ向けシステムの世界で拡大を続けたWindowsの脅威に対抗したものだった。OpenOffice.orgやStarOfficeなどの施策で、Microsoft Officeに対抗しようと試みたこともあった。

 ひるがえって現在の状況を見ると、業界には昔と同じような不安が渦巻いている。業界のさまざまな立場の企業やユーザーがOpenStackを支持して、AWSの独占拡大を食い止めようとしている。OpenStackをAWSと比べたときの位置付けは、かつてのMicrosoftに対するLinuxの意味合いと共通するものがある。

 1990年代にLinuxが乗り越えてきた課題に、OpenStackは直面している。Linuxが公開された当初、あまりに複雑なため、市場の中でほんの一握りの人々にしか使いこなせなかった。それから10年以上たって、Red Hat Enterprise Linux、Ubuntu、SUSEなどのディストリビューションが普及したことでようやく、Linuxは企業でも利用できるものになった。OpenStackは急激なペースで進化を続けているものの、爆発的に普及するレベルにはまだ至っていないようだ。

 さらにクラウドに関しては、APIの標準化をめぐる議論もある。AWSをクラウドAPIの金科玉条として受け入れるかどうかに関しては、業界の中でも見解が分かれている。EucalyptusとCloudStackのAPIにはAWSとの互換性があるが、OpenStackはAPIに関してはAWSとは異なる独自の形式を採用している。これはODBCとJDBCをめぐる議論や、OpenXMLまたはOpenDocumentのどちらを標準とするかという議論と似た展開だ。

 オープンソースを支持する活動家たちは、AWSの閉鎖性をやゆして、このサービスを「ホテル・カリフォルニア」というあだ名で呼ぶ(訳注)。Amazonは、同社のクラウドを実現しているテクノロジーの詳細を公開していないことで、度々批判を受けている。

訳注:『Hotel California(ホテル・カリフォルニア)』は、1970年代の世界的な大ヒット曲。「このホテルは一度入ったら最後、二度と脱け出せない」という趣旨の歌詞が含まれている。

3.愛憎が入り混じる、パートナーとの複雑な関係

 Microsoftは、開発者や独立系ソフトウェアベンダーたちが主体となって運営する、活発なエコシステムを作り上げたことで知られている。しかしMicrosoftはOfficeのバージョンを上げるたびに新しい機能を追加した。すると、それまで類似の機能をツールとして構築し販売してきたパートナーは、当然大きな影響を受けた。やがてOfficeスイートへの機能追加が一定のしきい値に達したことで、Microsoftはやむを得ず、かつて競合していたパートナーが提供する機能をOfficeとバンドル(連携)する施策へと方向転換した。またMicrosoftがコンサルティングサービスに進出することを公表した際、システムインテグレーターやコンサルティング業界の各企業は、この発表を脅威と受け止めた。

 そして今、AmazonはAWSの事業でMicrosoftと同じ道をたどりつつある。

 AWSには、システム利用のパターンと、プラットフォーム上で稼働中の顧客のワークロードを追跡できるという、独自の機能がある。従って、顧客のシナリオと最善のユースケースに関して、AWSは死角なく質の高い情報を収集できる立場にあり、その分野に対する投資の価値を最大限に拡大することができる。しかし新しい製品やサービスを投入することで、その企業のパートナーの既存事業を奪うことにつながるとすれば、これは問題だ。

 ここではAWS OpsWorksを例に取って考えてみよう。これは、システム開発と運用を密接に連携して進めるDevOpsチームにとって、作業が進めやすくなるツールだ。Amazonは、複数のクラウドを管理するためのツールScalariumを所有していた独Peritorを買収した。Scalariumが登場する前、顧客自身でワークロードを管理する場合は、Scalr、RightScale、ScaleXtremeといったサードパーティーのツールに頼るしかなかった。一方、ある地域に配置しているマシンイメージを別の地域に移行させるための一連のツールを開発した、米Ylasticのような企業も存在する。Ylasticはまた、クラウドのリソースを定期的にチェックして適切な最適化のレベルを推奨するツールも発売している。AWSはスナップショットのコピーを本番環境とは別地域に配置するサービスに続いて、Trusted Advisorサービス(システムの利用方法に関するコンサルテーション)の開始も発表した。これでYlasticの既存事業と直接競合することになる。

 2014年7月、AWSはファイル共有とコラボレーションのためのツール(Zocalo)とモバイル管理機能(Cognito)のサービスを発表した。この体制で、Dropbox、Parse、Kinveyなどのプロバイダーに対抗するためだ。なお、これらのAWS競合プロバイダーは、実はAWSのユーザーでもある。

 AWSがプロフェッショナル向けのサービス事業に進出したことで、パートナーやシステムインテグレーターの仕事が奪われている。そしてAWSのWebサイトで社員募集のページを見ると、プロフェッショナル向けのサービス業界の経験者を狙って、コンサルタントを大勢募集していることは一目瞭然だ。

4.全方向にあらゆるものを提供

 1990年代の終わりまで、Microsoftはコンシューマー向けの企業だった。Windows 98とOffice 98の成功にどっぷり浸っていた。ところが2000年代の半ばに同社は、当時米IBM、米Sun Microsystems、米Oracle、独SAPの4社が牛耳っていたエンタープライズ向けIT事業に進出することを決断した。そこで同社のサーバ関連製品を強化したところ、2〜3年でMicrosoftはエンタープライズ市場でもかなりのシェアを獲得するに至った。顧客企業のデータセンターに、同社のActive Directory、SQL Server、SharePoint、Exchange、BizTalk、System Centerなどが展開されているのを見ることが多くなった。

 その後米AppleのiPod、iPhone、iPadが立て続けに成功したのを目の当たりにして、Microsoftはようやく、コンシューマー市場ではかつての競争力を失っているという事実を認識した。しかもZune、Windows Phone 7、Windows 8がことごとく不発に終わったことで、Microsoftの立場はいよいよ危うくなった。Xbox事業も頭打ちで、アナリストが経営陣に対して、この製品ラインをMicrosoftの基幹事業から切り離せと進言するほどだ。

 一方Amazonがたどってきた道のりも、Microsoftに極めて似ている。現在同社はオンライン小売業者であると同時に、電子書籍リーダーのOEMメーカー、クラウドサービスプラットフォームのプロバイダー、メディアサービス企業、デバイスメーカーとしての顔も持つ。Amazonの成功物語は、Microsoftのそれよりもずっと興味深い。なぜならAmazonには、これまでに進出した全ての分野でトップ企業になりたいという野望があるからだ。

 AWSのサービスポートフォリオは、Microsoftの製品ポートフォリオによく似ている。Windows Vistaにはかつて8種類のエディションがあったが、現在のAWSは35種類を超えるWebサービスを提供している。どちらも煩雑で、顧客にとっては悩みの種であることは共通している。Amazon EC2だけをとっても、インスタンスの種類として35個以上の選択肢があるが、そのくせ企業の性質によってどの選択肢が適しているかという目安は何も提示されていない。AWS marketplace (AWS対応のサードパーティーツールを紹介するWebサイト)にあまり統一性がないせいか、パートナー間で提供機能の重複がみられる。加えて、AWSの料金体系は複雑だ。

 Amazonも90年代のMicrosoftと同じで、既存のポートフォリオを整理するよりは新しいサービスを展開することに熱心だ。

5.エンジニアリングとマーケティングの両分野での積極的な活動

 MicrosoftもAmazonも最先端のテクノロジーに対して極めて優秀な人材を投入し、開発を進めている。しかしマーケティングとなるとAmazonは立ち遅れている印象があったが、Microsoftを見て学んでいるふしもある。

 Microsoftには、Zuneのような今一つの製品でさえもカッコいいイノベーションだと人々に感じさせるほど、傑出したマーケティング力があるとよく指摘されていた。同社の新製品やイノベーションを世間に披露する場として、Build、TechEd、WPCなどのカンファレンスの開催に力を入れている。Microsoftの製品トレーニングや製品知識の認定プログラム、MCSEやMCSDのタイトルを取得していることは、1990年代のオタクたちの間では一種のステータスだった。

 年1回開催されるAWSのユーザーカンファレンス、re:Inventは2000年代のMicrosoft PDCを思い起こさせる。Amazonがこの種のイベントを開催するのは初めてのはずなのに、同社のマーケティング部門は、宣伝イベントを世界各地で開催するほどの優秀さだ。AWSが認定するプロフェッショナル資格の取得者は、各企業の採用担当者から注目を集めている。さらにAmazonは、クラウドテクノロジーの標準の確立に向けても努力を続けている。

 また両社ともシアトルに本社を構えているので、当然のことながら、AmazonはMicrosoftで活躍していた優秀な人材のスカウトにも熱心だ。

 Amazonは慎重に企業経営を進めているが、現在のITプラットフォームを築いているもう一方の大企業(Microsoft)と、いずれ同じ課題に直面するのではないかと感じる、初期的な兆候も見られる。エンタープライズソフトウェアのサプライヤーとなるのは、eコマースのポータルサイトを運営するのとはわけが違うことは、Amazonも認識している。それならば、クラウドサービス市場の競争が激化している今こそ、AWSは自社事業のポートフォリオを拡大させるのではなく整理するべきだ。

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