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» 2014年09月26日 08時00分 UPDATE

球団ビジネス変革の裏側(前編):オリックス・バファローズはいかにファン会員データを“宝の山”に変えたか (1/2)

シーズン序盤からの快進撃そのままに、ついには2014年のパ・リーグ優勝に迫りつつあるオリックス・バファローズ。チームの成長に足並みをそろえるかのように球団事業も改革を進めて大きな成果を上げている。そこに至る背景を取材した。

[伏見学,ITmedia]

 目下、熾烈なリーグ優勝争いが繰り広げられているプロ野球のパ・リーグ。3年振りの優勝を目指す福岡ソフトバンクホークスに対峙するのが、球団合併後、初めての優勝を目指すオリックス・バファローズだ。

 一昨年は最下位、昨年が5位と低迷していたオリックス・バファローズだったが、今シーズンになって序盤から快進撃を続け、今や優勝が手に届くほどまでに息を吹き返した。その背景には戦力補強などのチーム改革があるわけだが、実は、チームだけでなく、球団事業においてもこの1〜2年で大きな変革を成し遂げているのだ。

 一例を挙げると、公式ファンクラブ「BsCLUB」の会員数は1年間で1万人以上増加し、グッズ売り上げも約33%伸びている。果たしてその裏側にはどのような取り組みがあったのか。一連の事業改革を指揮した、オリックス野球クラブ 企画事業部 企画グループ長 兼 ファンクラブグループ長 兼 宣伝グループ 兼 企画広報グループ 兼 イベント・運営グループ 課長代理の緒方貴弘氏に話を聞いた。

オリックス野球クラブの緒方貴弘氏 オリックス野球クラブの緒方貴弘氏

“生かせない”会員データ

 10年前に起きたいわゆる「プロ野球再編騒動」によりオリックス・ブルーウェーブと近鉄バファローズが合併、翌2005年からオリックス・バファローズとしてペナントレースを戦っている。その2年後の2007年に公式のファンクラブ組織が発足した。

京セラドーム大阪 京セラドーム大阪

 当時は年会費の金額に応じて3段階のグレードに分かれていたものの、現在のようなポイントプログラムなどはなかった。ファンクラブ会員は入会時に配られるスタンプ手帳に、試合観戦で球場へ訪れた際などに得られるスタンプを貯めて、その数に応じてグッズなどの特典と引き換えるという仕組みだった。

 この形式で数年間は運用していたものの、オリックスが管理できる会員に関するデータは、ファンが入会時に登録した基本的な属性情報しかなく、例えば、どの会員がいつの試合を観戦したか、どんなグッズを購入したかなどは把握できなかった。「会員の行動データがまったく取れていなかった。それではキャンペーンなどを打つにしても、戦略的な施策に繋げることはできなかった」と緒方氏は振り返る。

 球団の事業は主にB2BとB2Cに分類できる。B2Bは球場広告や放映権などで、B2Cではチケットやグッズ販売が収益の大きな柱となる。この売り上げを成長させる上で会員の活性化は重要な鍵になる。また、オリックスの本拠地である「京セラドーム大阪」はオリックスグループが所有しており、球場での飲食、グッズなどの売り上げも球団の収益になるため、そのメリットをもっと生かすべきだった。

西武やロッテとは異なるシステム

 そこでオリックスは2011年、会員向けCRM(顧客情報管理)システムの検討を始めた。他球団では既に千葉ロッテマリーンズや埼玉西武ライオンズが全日本空輸(ANA)のマイレージシステムをベースにしたCRMシステムを活用していたが(関連記事:なぜファンは西武ドームに何度も詰めかけるのか)、オリックスは独自システムの構築を目指した。その理由はシステムの柔軟性を求めたからである。「会員に関するデータは日々増大、多様化していくので、それを支えるシステムも稼働しながら常に改良していくことが不可欠だった」と緒方氏は説明する。

 2011年10月にパートナーとなるITベンダーの選定を開始。複数企業と協議した後、最終的に日立ソリューションズのクラウドサービス「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」に決定した。選定理由の1つがクラウドサービスだった点である。

 「元々、自前でオンプレミスシステムを抱えるという選択肢はなかった。運用管理コストがかかるし、先述したように柔軟性を重視したからである。クラウドサービスであれば、販売系をはじめとするさまざまなシステムと容易に連携を図ることも可能だし、トランザクションの急増にも柔軟に対応できる」と緒方氏は強調する。

 こうして新たなCRMシステムは6カ月ほどで構築し、2012年11月に本格稼働した。

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