ローコスト開発と競合他社との差別化という相反するニーズ、そして変化が激しいグローバル市場に対応しながらも継続的に革新していくために──。2032年度までに世界3000店舗の達成を目指すニトリが選んだIT基盤は何か。
「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで知られる家具販売大手のニトリが、アメリカへの本格進出などグローバルでの事業展開を中心に、今後の大幅な事業成長を計画している。国内の事業成長と同時に、欧米並みの住まいの豊かさの提供を──をテーマに、同社は2015年1月現在の340店(2015年2月期月次国内売上高前年比推移より)から、2032年度までに世界3000店舗、売上高3兆円の達成を目指す大きな目標を掲げている。
この大きな成長計画を支えるべく、どんなIT基盤が必要か。これまで事業の成長を支えた社内情報基盤と本部機能も、運用から約12年。今後のグローバル展開も含めた事業の成長も担うには限界が見えていた。同社はグローバル戦略も想定した社内情報基盤の刷新にどう挑んだのか。
低コスト開発と他社との差別化という、相反するとされる需要を追求することで成長を遂げてきた同社。課題は「増えるユーザー数/組織拡大への対応」をどうするか、そして急成長しただけに「社員コミュニケーション環境が分散していた」が大きかった。
これまではNotesでグループウェアや文書管理システムを運用していた。ただ、自社の急な成長速度に追いつかず、個別にシステムを追加導入してビデオ会議などへの新たなニーズを補った結果、複雑化。運用管理などに情シス部門のリソースが多く割かれていたことも課題としていた。
また、今後のグローバル戦略への意識も必須だった。サーバやソフトウェアライセンスの管理やコスト、今後の陳腐化、そして海外拠点への横展開と一元的な管理を行うことを考え、オンプレミスではなく、クラウドサービスが適すると判断した。「グローバルに対応した情報共有基盤」であり、「クラウドでのエンタープライズシステム導入実績が豊富にある」、そして「ユーザー部門自身で改善できる製品」であることを刷新の要件とした。
新基盤は、ユーザーが有益ととらえている個々のツールの機能を尊重しつつ、さらなる成長とグローバル対応を意識したものへの刷新を目指した。具体的には、必要とする機能を包括していること、自社の情報セキュリティポリシーを強化できること、そしてグローバルに展開するサービスであることだった。
要件を明確にしたため、軸とする刷新サービスの決定と以後の刷新作業は早かった。2013年春にマイクロソフトのクラウド版統合グループウェアサービス「Office 365」の採用を決めた。事業のスピード感を維持する統合型基盤であること、国内以外の拠点でグローバル展開し、運用するにも有利だったことが決め手となった。
Office 365に包括する、Exchange Online、SharePoint Online、Lync Onlineにより既存のグループウェアを刷新し、情報セキュリティポリシーを強化できる。この上で、拠点の情報共有基盤を一本化し、効率化とコスト削減も図りたい。「特に、Share Point Onlineをどれだけ活用できるかが、導入効果を最大化させるキーポイントと考えた」(同社東京本部 業務システム室の玉山久義氏/出典:ソフトバンク・テクノロジーWebサイト)。
使える機能やツールが多岐に及ぶOffice 365は、単にMicrosoft Officeの最新版をサブスクリプション型で使えるだけではない。Office 365で包括する機能をいかに使いこなすか、ここがコストメリットを高める鍵になる。自社のニーズを理解し、導入選定の手助けや実現したい機能をどう構築するか、そして導入後に目指すビジョンをサポートしてくれる導入パートナーも必要と考え、ソフトバンク・テクノロジーをパートナーに選定。2013年5月中旬に新基盤の実導入プロジェクトが動き始めた。
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