「銀行が必要なわけじゃない」── 破壊的新規参入者の脅威をチャンスに変えるCitiIBM InterConnect 2015 Report(1/2 ページ)

装いも新たになった「InterConnect 2015」がラスベガスで開幕した。初日は「ハイブリッドクラウド」に焦点が当てられ、オープニングの基調講演には、この新しいコンピューティングのパワーを生かし、ビジネスの変革に取り組む顧客企業が登場した。

» 2015年02月24日 12時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
スタイリッシュな高層ホテルの建設で街並みが変わるラスベガス

 この街のダイナミズムには、訪れるたびに驚かされる。ネバダ州ラスベガスの目抜き通りにはテーマパークのような名門カジノホテルが軒を連ね、世界から訪れる観光客を魅了してきたが、最近はその間隙を縫うようにスタイリッシュな高層ホテルが建ち、新たな層を呼び込んでいるという。

 コンピュータ業界の巨人、IBMも、依然として売り上げの減少に歯止めがかからないものの、そんなことは意に介さないかのように成長分野へのシフトを加速する。企業向けのクラウドコンピューティングやWatsonによるコグニティブコンピューティングで新たな市場を創造し、再び主導権を握ろうと狙っているのだ。

 クラウド、アナリティクス、モバイル、ソーシャルといった成長分野へ大きく舵を切る同社は、これまでのPulseやImpactといった製品ごとの主要なカンファレンスを統合、「InterConnect」に仕立て直した。「クラウドやモバイルのプレミアカンファレンス」と銘打ち、装いも新たになったInterConnect 2015は米国時間2月23日、MGMとマリーナベイという2つのホテルで開幕、2万人を超える桁違いに大きな規模のカンファレンスとなった。

 初日のテーマはズバリ、「企業向けのクラウド」、中でも既存の情報システムと上手く組み合わせた「ハイブリッドクラウド」に焦点を当てた。オープニングの基調講演には、この新しいコンピューティングのパワーを生かして、伝統的な企業や規模の大きな企業であっても、まるで新興企業のように新たな市場創造やビジネスの変革に取り組む顧客企業が登場した。

360度の視界でデジタル化を推進するAirbus

 IBMでクラウド事業を統括するロバート・ルブラン上級副社長からトップバッターとしてステージに招き上げられたのは、仏トゥールーズに本社を置く航空機メーカーの雄、Airbusだ。同社では、クラウドとアナリティクスを活用し、航空業界の課題解決や新しい価値の創造に挑んでいる。

Airbusのカスタマーサービス部門で戦略とビジネス開発を担当するアイメリー副社長

 「飛行機がゲートに到着してから再び乗客を乗せて出発するまでの平均時間は25分。ある航空会社は45分もかかっており、大きなコスト負担となっている。こうした待ち時間がより効率的な保守によって短縮できれば、業界全体の収益改善につながる」と話すのは、同社カスタマーサービス部門で戦略とビジネス開発を担当するパスカル・アイメリー副社長だ。

 Airbusでは、パイロットがiPadをコックピットに持ち込み、航路や燃費の最適化などに役立てるソリューションを提供してきたが、近い将来は、さまざまなデータを解析し、その結果を整備の技術者も共有し、より効率の良い予防保守が行えるようにするという。

 「どう変革を進めればいいのか? 先ず、360度の視界を確保することだ。顧客や社員はデータを持っている。それらをビジネスにどう生かせるかを考える。そして、手早く始め、上手くいった取り組みを拡大していけばいい」とアイメリー氏。

 デジタル化が進む金融では、さらに大きな変革の波が押し寄せている。大手金融のCitigroupも新規参入者の破壊的なサービスに危機感を募らせる。

 「便利な決済をはじめ、より良いバンキングサービスは必要とされているが、銀行が必要とされているわけではない」とまで言い切るのは、Citigroupのリテール部門でチーフ・マーケティング・オフィサーを務め、顧客体験とデジタル戦略について責任を持つヘザー・コックス氏だ。

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