auショップの販売戦略を支えるモバイルBI 導入の中心となったのは営業部門だった(1/3 ページ)

KDDIのコンシューマ営業と全国のauショップをつなぎ、販売実績をリアルタイムに共有する「Sales Navigator」。1万を超えるユーザーがモバイル環境からアクセスする仕組みは現場の声から生まれた。

» 2015年04月21日 15時00分 公開
[ITmedia]

 BI(ビジネスインテリジェンス)といえば、企業内に蓄積されたデータを分析して、経営層が戦略立案に生かすものだと思われてきた。だが、それはすでに過去の話。今では営業現場などにいる業務部門が利用するツールになりつつある。

 こう切り出すと、Tableau(タブロー)やQlikView(クリックビュー)のようなセルフサービス型のBIツールを想像するかもしれない。だが、KDDIが2014年9月から本格稼働を始めた営業支援ツール「Sales Navigator」は、Oracle BIモバイルを使った“レガシー”なBIシステムだ。

 KDDIのコンシューマ営業部隊と全国のauショップのスタッフ合わせて1万を超えるユーザーが、iPhoneやiPadなどのモバイルデバイスからリアルタイムに販売実績データを参照し、分析している。これだけでも興味深い事例だが、見逃せない点を挙げるとすれば、このシステムを主導したのは情報システム部門ではないということだ。

 Sales Navigatorは、KDDIのコンシューマ営業本部に属する企画部門が中心となり、身内である現場が欲するもの、使いやすいものを作り上げることに注力したBIシステムだ。実際、稼働後のシステム利用率はKDDI側、販売代理店側ともに8割を超えている。

 さまざまな点で、今後の情報システム構築のあり方について示唆に富む事例ともいえる。「Oracle Cloud World」に登壇したKDDIの森下義廣氏(コンシューマサポート企画部 グループリーダー)の講演を基に紹介しよう。

営業の仕事は数字を報告するだけ?

森下義廣氏 森下義廣氏

 森下氏が所属するコンシューマサポート企画部は、販売代理店などが運営するauショップの店頭における接客プロセスや、それを支援するKDDIのコンシューマ営業部隊の業務プロセスを改革する部門だ。現場における課題抽出や顧客ニーズの把握からシステム開発の要件定義、運用改善まであらゆるプロセスを担っている。

 現場が抱えていた課題は大きく3つあった。営業帳票の作成に手間と時間がかかるうえ、印刷やメール添付での伝達には情報漏えいリスクがあること。情報共有の品質やタイミングにばらつきが発生すること。帳票に基づいた実績値の報告だけが営業活動となり、分析や改善活動まで手が回らないこと。

 KDDIの営業担当者としては出社したらすぐにでも現場である販売代理店を訪問し、営業支援を行いたいもの。だが、前日の販売実績データを担当する代理店ごとに帳票化する作業に1〜2時間程度とられていた。そのうえ現場では数字の説明だけで終わってしまい、データ分析に基づいた提案までには至らなかった。

 一方の代理店側としても数値データを見られるのは担当営業の作業完了を待たなければならないという悩みもあった。また、報告された数字から浮かんだ新たな質問を担当営業にぶつけても、手元には異なる軸で分析したデータがないため答えが得られず、持ち返りとなることも多かった。

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