外に出れば「情シス不要論」なんか怖くなくなる ホンダ女子情シスの挑戦(後編)情シス“ニュータイプ“の時代(2/2 ページ)

» 2015年10月01日 08時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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 それまでにも業務の一環としてベンダーが主催するカンファレンスで他社の事例を聞いたことはあったが、JAWS DAYSの、特に夜に開催されていたイベントは、それまでに見たことがない雰囲気で圧倒されたという。

 「まず、仕事関係のイベントなのにスーツじゃなくてジーパンとTシャツの人たちが集まっているのが、私にとっては珍しかったんです。そういう人たちが『ラスベガスに行きたいか! ウォー!』とか言って、異様な盛り上がり方をしていて……。もう、びっくりですよ。いろんな世界があるんだな、と思いましたね」(多田さん)

 参加者の楽しそうな様子に興味をひかれたものの、IT嫌いな自分が彼らと話をできるのか、という不安もあり、「最初はなかなか入って行けなかった」と多田さんは振り返る。

 コミュニティーの一員になるきっかけは、ラスベガスで行われたAWSのカンファレンス「re:Invent 2013」だった。当時はまだ日本人の参加者が少なく、日本のクラウド活用のキーパーソンと直接話すことができたのだ。

 「そこには、ハンズラボの長谷川さんや、クラウド専業SIerなど、『IT業界で最先端のことをやってやろう!』と意気込む人たちが集まっていました。そこで話すのは、クラウドという技術のことではなく、“世の中をいかに面白くするか”ということ。そのためにクラウドというソリューションが使えそうだと、皆がワクワクしているんです。これまでそういう考え方をしたことがなかったのでカルチャーショックを受けましたが、集まっているのが『クラウドやITありきではない人たち』だったからこそ、ITが好きではない私でも話に入っていくことができたんだと思います」

 その後、国内のイベントにも積極的に参加するようになった多田さんは、クラウドに関する情報収集の効率が飛躍的に向上したのを実感したという。クラウド関連の情報量は膨大で、必要な情報を探し当ててもそれが正しいかどうか判断するのが難しい。コミュニティーを通じて先進的なクラウド活用に取り組むユーザーとつながり、彼らが流す情報からトレンドや真に役立つ情報が得られるようになったのは、大きな財産だった。

 さらに、社内でクラウド関連の提案をするときになかなか理解が得られず、自信がなくなったときにも、社外の仲間の存在が励みになった。

 「『クラウドでこういうことをやりたい』と言っても、オンプレミスの考え方に染まっている人には話が通じにくいことがあります。私は、相手が分かってくれるまで根気よく説明するタイプですが、なかなか理解されなくて落ち込むこともあるんですね。そんなときに社外の人たちと会うと、みんなで前向きに話し合うことができて、『私がやろうとしていることは間違ってない』とエネルギーを蓄えて戻ってくることができるんです」

これからの情シスは外に出たほうがいい

 さまざまな経験を重ねてきた多田さんが今、情報システム部門の人に伝えたいのは、「若い人ほど外に出て、早いうちからいろいろな情報源を持ったほうがいい」ということだ。

 社内の仕事が多い情シスが外に出ようと思っても、最初はなかなかうまくいかないかもしれないが、「諦めずにトライしてほしい」という思いがある。多田さん自身も、最初にコミュニティーに参加したときは「怖くなって帰ってしまった」ことがあるが、回を重ねるうちに自信がついたからだ。そして、外に出て得られるものの大きさは、計り知れないという。

 「今思えば、クラウドの知識が浅かった頃は、ベンダーさんの言いなりになってしまっていたこともありました。社外に情報源があれば自分なりの判断ができるし、『もっとこういう風にしてほしい』というリクエストもできます。一度、外部に情報源ができると、それは指数関数的に増えていくので、仕事をしていく上できっと大きな財産になるはずです」

 また、クラウドの普及に伴って浮上してきた「情シス不要論」についても、普段から部門の枠組みにとらわれることなく、会社にとって必要なこと、個人としてやりたいことを考えるようにすれば、不安は払拭されるはずだという。

 社内外にさまざまな接点を持って世の中の動きを知り、その中で自分の役割を見つけていく――。これからの情シスに必要なのは、こんな姿勢なのかもしれない。

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