紙の書類をデジタルデータに変換する方法としてもっとも手軽なのは、スマホのカメラ機能を使っての撮影だ。こうしたスマホ向けのスキャナアプリのうち、今回はAndroid用アプリ「TurboScan」を紹介する。
保管コストの削減はもとより、劣化の防止や検索性の向上、再利用の促進などさまざまな利点が認められ、徐々に広がりつつある紙の文書や帳票のデジタルデータ化ですが、用途や目的を考慮せずにむやみにスキャンすることでかえって効率が悪くなったり、作業に手戻りを発生させてしまうことも少なくありません。
また商法や税法で保管が義務付けられている文書の場合、電子帳簿保存法やe-文書法などのルールに則った手順を踏む必要があり、自分の判断でやみくもにデータ化するわけにいかないといった事情もあります。
本連載ではこうした現在の状況を踏まえつつ、文書のデータ化にまつわる情報、さらにはフォーマットであるPDFや変換機器であるスキャナ、保存先となるストレージに至るまで、業務現場と情報システム部門に役立つ知識やTips、活用術を幅広く紹介していきます(著者より)
「TurboScan」は、Piksoftが提供するAndroid用のスキャンアプリ。価格は250円で、試用時のバージョンは1.2.6。海外のアプリで、インタフェースは英語となる。
本アプリの特徴は、同じ書類を3回撮影した中からもっとも適した画像を自動的に選ぶ機能を備えていることだ。角度を変えたり、フラッシュのオン/オフを切り替えるなどして撮影した3枚のバリエーションの中から、望ましい1枚をアプリが選んでくれるため、つねにクオリティの高いアウトプットを得られる。
スキャンして取り込んだ画像はメールに添付して送信できるほか、PDFもしくはJPGに変換してさまざまなクラウドサービスと共有できる。なかでもメール添付での送信は、送信先のアドレスやタイトル、本文フォーマットをあらかじめ登録しておけるので、スキャンのたびに決まった宛先に送る場合には重宝する。一方でクラウドサービスとの連携はAndroid標準の共有機能を用いており、アプリ側にアカウントを登録したり、自動アップロードするなどの機能はない。
本アプリのもう1つの特徴は、明るさの調整が自動補正に加えて、5段階での手動補正にも対応していることだ。手動調整機能を持たないアプリが多い中で、本アプリのこの機能は、少しでも高いクオリティで書類を取り込みたいユーザーには朗報だろう。カラーモードでは白黒2色をベースに特定の色を乗せたような独特の処理になるが、これとは別に「フォト」という、元の色合いに近いモードも用意されているので、好みに応じて使い分けるとよい。
一方、自動撮影や連続撮影、リアルタイムでの輪郭検出といった、昨今のトレンド機能はなく、またクラウドとの連携も自動アップロードには非対応と、機能的には一昔前のアプリという感が強い。また、OCR機能も備えていないので、テキストを抽出する用途には使えない。画質的にはむしろOCR向きのクオリティなので、機能が搭載されていないのがむしろ不思議に思えるほどだ。
もっとも、使い勝手はシンプルでこなれており、また試した限りでは、他のアプリに比べてフラッシュ撮影時も白飛びしにくい傾向があるようで、暗めの室内でも比較的良好なスキャン結果が得られる。明るさの手動調整機能が充実していることを考慮しても、クオリティを重視するユーザー向けのアプリといえそうだ。なお、5枚までのスキャンが可能な無料版も用意されているので、まずはそちらから試してみるのがよいだろう。
項目 | 機能 |
---|---|
自動スキャン | × |
台形補正(自動) | ○ |
台形補正(手動) | ○ |
曲面補正 | × |
明るさ・コントラスト調整 | ○ |
カラーモード変更 | ○ |
文字のテキスト化 | × |
形式 | PDF/JPG |
クラウドサービスへのアップロード | ○ |
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