AWSのナンバー2が語るパートナーエコシステムの差別化戦略Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年10月26日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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将来的に企業システムの95%はクラウドへ移行

―― とはいえ、MicrosoftやGoogle、IBMといった競合がAWSと同様のクラウドサービス、およびそのパートナーエコシステムづくりに注力している。脅威ではないか。

セリプスキー 私たちはそうした競合他社の動きをあまり気にしていない。気にしているのは、私たちのお客様が満足しておられるか。その度合いをどうすれば上げられるかだ。

 AWSはパートナーとともに、これまで10年にわたってクラウドサービスをお客様に満足して利用していただけるように、技術革新を続けるとともにエコシステムの強化に努めてきた。そのお客様もスタートアップのニーズが多かった当初から、最近では大手企業がオンプレミスの基幹システムをクラウドへ一気に移行する例も数多く出てきている。

 そうした経験と実績は、一朝一夕に築けるものではない。パートナーエコシステムの中で築き上げてきたその経験と実績が、相乗効果をももたらして次のお客様との関係につながっている。その意味では、あなたが社名を挙げた競合他社と比べても相当の差があると自負しているし、今後その差はさらに広がっていくと確信している。

AWSのパートナー制度

―― パートナーエコシステムにおける今後の課題および拡大策は。

セリプスキー ビジネス全般において言えることだが、現状に満足することはあり得ず、常に改善および改革が必要だ。パートナーエコシステムにおいては、まずは多種多様なお客様のニーズに一層応えられるように「広く深く強く」していくのが永遠の課題になる。

 さらに、課題であり拡大策でもある点として、お客様から見てパートナー各社の得意分野がより見分けやすくなるようにしたいと考えている。具体的には、現在「コンピテンシー・パートナープログラム」という名称で適用し始めているが、これはパートナー各社が持つコンピテンシー、つまりは得意分野の実績や技術力をAWSが認定することで、お客様がパートナーを選ぶ際の参考にしていただこうというものだ。パートナーにとってもこの認定を取得することで、よりお客様を広げていっていただけるようになると考えている。

―― 最後に、5年後あるいは10年後、企業システムのどれくらいの割合がクラウドサービスに移行していると見ておられるか、お聞かせいただきたい。

セリプスキー 10年前にもし同じ質問を受けたとしたら、私はAWSのクラウドサービス事業が年間売上高70億ドル規模になるとは、とても言えなかったと思う。さらに今後はこれまでの10年を上回る勢いで広がっていくだろう。いつの時期かを明確に言うことはできないが、将来的に企業システムの95%はクラウドサービスへ移行すると確信している。

 ただし、最初に触れたように、オンプレミスのシステムをクラウドへ移行する際には相応のプロセスを踏む必要がある。その過程においてハイブリッド環境で利用するケースも出てくるだろう。そうしたニーズに対し、AWSはパートナーとともにお客様をしっかりとご支援していきたいと考えている。


 以上が、セリプスキー氏とのやりとりである。筆者がとくに印象に残ったのは、「顧客から見たパートナーエコシステムのあり方」を常に念頭に置いていること、「競合他社の動きはあまり気にしていない」と言いながら本稿で紹介しきれなかった内容も含めて結構言及していたこと、とはいえ幾度も出てきた言葉は「お客様満足度の向上」だったことだ。

 同氏の話を聞いて、AWSのパートナーエコシステムの繁栄は、やはりクラウドサービスそのものが今後も確固たる“商品力”を持ち続けられるかどうかにかかっていると、あらためて強く感じた次第である。

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