雪印「6Pチーズ」を1日に20万箱作る、巨大工場の舞台ウラ(1/3 ページ)

2015年に本稼働したばかりという雪印メグミルクの“最新チーズ工場”に潜入。高度にIT化されたシステムの裏には、5年越しの一大プロジェクトがあったという。

» 2016年02月09日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
photo 発売当時の「6Pチーズ」のイラスト。今は社名にも入っている“雪印”は、もともと商品のブランドネームだった。ちなみにPはPieceではなく、Portion(一部、部分)という意味(出典:雪印メグミルク)

 あるときは酒のつまみ、またあるときは、軽食や料理の名脇役として日々の食卓を彩る「チーズ」。人類が作った“最も古い加工食品”として、紀元前から作られていたといわれているが、日本で本格的な生産を開始したのは1928年と、その歴史は意外と浅い。

 生産が始まって間もない1935年に、北海道製酪販売組合(雪印メグミルクの前身)が発売したのが、現在の「6Pチーズ」。読者の皆さんもスーパーなどで一度は目にしたことがあるだろう。世代を越えて売れ続けるロングセラー商品だ。

 この6Pチーズ、今では1日に約20万箱(1箱につき6個入り)が製造されているが、それがどこで作られているかご存じだろうか。答えは茨城県南部にある「阿見工場」。2015年5月から本稼働を始めたばかりの雪印メグミルク最大の工場で、6Pチーズやスライスチーズといった主力商品をここで製造し、全国へと発送している。

photo 2015年5月から本稼働を始めた阿見工場。東京ドーム約3個分という敷地を持ち、プロセスチーズやマーガリンといった約200種類の商品を製造している(出典:雪印メグミルク)

ITで高度に管理された巨大チーズ工場

 約200種類の商品を製造する阿見工場は、東京ドーム約3個分(13万4000平方メートル)という広大な敷地を持ち、15万人を収容できるキャパシティーがある。しかし、その工場で働くのはたったの500人。これは多くの作業がITによって自動化/管理されているためだ。

 例えば6Pチーズの場合、国内および海外から調達した原料チーズを工場併設の倉庫で熟成させた後に、細かく粉砕。加熱して溶かした後に、専用の型を使って充てんし、包装、検査を経て冷却されて、箱詰め後に出荷するという工程となる。

photo 阿見工場内の様子。商品がさまざまなラインへと進んでいる
photo 阿見工場内の様子。6Pチーズの生産ライン

 工場内はもちろんのこと、倉庫から工場に搬送する原料チーズの量や、箱詰めからトラックに積めるまでの一連の作業といった工程についても、生産品目や生産量といった諸条件に応じて、自動で制御される。製造だけではなく、倉庫から出荷まで含めたほぼ全てのプロセスにおいてITが絡んでいるのだ。

 この巨大工場を支えるシステムの構想が立ち上がったのは、工場の敷地が決まった2010年末ごろ。システム構築から稼働までに約5年がかかったことになる。現場の人間からエンジニアまで、約30人がチームを組んで進めたプロジェクトは困難を極めたという。

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