雪印「6Pチーズ」を1日に20万箱作る、巨大工場の舞台ウラ(2/3 ページ)

» 2016年02月09日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

外部環境の変化に強い生産体制を

photo 雪印メグミルク 生産統括部 装置開発グループ副部長 松本卓夫さん

 阿見工場は、神奈川県と兵庫県にあった3工場の機能を集約する形で生まれた。施設の老朽化や、3工場の生産能力に限界が見えていたこと、増設が困難であることが主な理由だ。

 「阿見工場の着工当時は、とにかく外部環境の変化に強い生産体制を作ることが急務でした。多様化するニーズに合わせ、柔軟に生産体制をコントロールできる施設が求められていたのです」(雪印メグミルク 生産統括部 装置開発グループ副部長 松本卓夫さん)

 国内におけるチーズの消費量は増えており、農林水産省の公表資料(関連リンク)では、1990年が約15万トンで2014年が約30万トンと25年で約2倍となっている。「チーズが嗜好品から日常的な食品として受け入れられるようになったのが大きな要因かと思います。ここ数年、消費量はほぼ横ばいですが、商品個数は増えているのです」(松本さん)

 200種類もの商品を安定して生産、管理するには、工場の“IT化”がカギになったという。特にプロセスチーズの場合、原材料が共通する部分が多く、その調達や振り分けは人力ではほぼ不可能だ。工場統合を機に、ITを軸としたサプライチェーンの最適化を目指すことになった。

複数ベンダーの仕様統一がシステム連携のカギ

 生産管理から製造プロセス、ライン管理、各機器の制御といった各レイヤーのシステムを一から作るため、システム構築のプロジェクトは非常に大掛かりなものとなった。松本さんも「今まで経験した中で最も大規模なプロジェクトでした。当初はここまで規模が大きくなると思っていませんでしたが、やりたいことや必要な要件を整理するにつれ、大規模なシステムが必要になるという考えになったのです」と振り返る。

 システムの設計や業務フローの見直し、製造ラインの考案など、プロジェクトの業務は多岐にわたったが、松本さんがプロジェクトで最も苦労したと話すのは、複数のベンダーがシステム構築に関わる状況において、システムの統合性を保たせることだったという。

photo 阿見工場のシステム構成図。生産計画から製造管理、倉庫管理とさまざまなシステム連携していることが分かる

 「工場設備の制御、倉庫設備の制御、情報システムの管理など、開発するシステムや求められる要件が多岐にわたったこともあり、多くのベンダーが関わっていました。例えばデータベースの扱い方1つとっても、ベンダーが違えば開発の方法は異なります。しかし、それを看過すればベンダーごとに異なるDBが作られ、DBだらけになってしまう。全てのシステムを連動させるためには、ベンダーを越えた共通の基準を作る必要がありました」(松本さん)

 そのため、松本さんのチームは月に一度全てのベンダーを集め、開発の進捗を確認する会議を開いたという。工程通りに進んでいるか、仕様はどうなっているかといった情報を共有し、自分たちの意図とずれていないか逐一確認したという。その結果、システムは製造管理と倉庫管理の2つに集約され、DBの数も2つにまで絞り込めた。

 「最終的に、DBは全体の情報システムを担当していた日立の仕様に全てを合わせる形で進めました。ベンダーごとに仕様が異なれば、メンテナンスやトラブルの際も『この部分を作ったのはウチじゃない』という議論になりかねません。そこはわれわれが旗を振って、方向性を示し続けなければいけない部分ですよね」(松本さん)

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