AIが“エンタープライズIT”を再定義する

「AI×ビジネス」が広がる今後、情シスは何をすればいい?AIの「今」を知る【後編】(1/3 ページ)

技術が発達し、実用例が広がったことから盛り上がりを見せているAI(人工知能)。今までは研究や技術の進歩に注目が集まってきたが、今後はビジネスへの応用が“主戦場”になるという。そのとき、情シスはどう動けばよいのだろうか。

» 2016年03月15日 08時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

 ここ最近、IT業界でブームとなっている「AI(人工知能)」という言葉。その研究自体は1950年代から始まっているが、脳科学のブレークスルーにより大きく発展し、自動運転車などの具体的な応用例が見えたことから、今盛り上がりを見せている。KDDI総研リサーチフェローの小林雅一氏によれば、AIは今、その関心が研究からビジネス活用へと移り始めているという。

AIの先端研究は大学から企業へ

 最近は大学でもAI関連の講義が大人気で、これからAIに精通した人材が増えていくことが予想される。2014年時点では、最新技術であるディープラーニングの専門家は世界に50人程度で、その多くはまだ大学院生だったが、今はその希少な人材を破格の条件で迎え入れる企業が増えている。

 例えばGoogleは、2009年に設立した研究開発組織「Google X」(現在の名称はX)にスタンフォード大学AI研究所の所長であったセバスチャン・スラン氏など、著名なAI研究者を迎え入れたほか、同じくAI研究の大御所ジェフリー・ヒントン教授(トロント大学)の会社を買収するなど、さまざまなプロジェクトを推進している(注:スラン氏は2014年にグーグルを退社)。

 Facebookも2013年にAIの研究所を設立し、所長にニューヨーク大学データ・サイエンス・センターの創設者ヤン・ルカン教授を招いた。ビジネスにおけるAI活用の可能性が見えてきたことで、最先端のAI研究は、大学ではなく企業がリードする時代になったのだ。

 小林氏によれば、ビジネスにおけるAI活用で今最も注目されているのは自動運転車で、その次はロボット産業だという。産業用ロボットの世界は日本製のシェアが高く、それらがAIを搭載して次世代ロボットへと発展していく可能性は大きい。

 ただ、それ以上に自動運転車への注目度が高いのは、産業の裾野が広く、雇用の創出も期待できるなど、社会への影響がより大きい点にある。このほど、米テスラモーターズが高速道限定の自動運転を実用化したが、完全な自動運転車が実用化するのは少し先の話だ。とはいえ、これ以外にもAIを活用したサービスやシステムは既に私たちの身の回りにある。

photo 昨今、カリフォルニア州の陸運局が集めた、自動運転車の実験データがワシントン・ポストで公開された。Googleが他のメーカーを突き放した成果を残しているという

 例えば、大阪のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」では、NECが開発した人の顔認証システム(関連記事)を導入し、年間パスを持つ来場者は「顔パス」で入場できる仕組みを実装した。Facebookはユーザーが投稿した写真に何が写っているのかを認識するシステムを開発しているが、これはいずれ、写真の内容からユーザーの興味関心や状況を類推して関連する広告を表示するような形で使われるだろう。

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