「CRM/SFA×ロボット」は企業に何をもたらすかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年03月28日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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顧客対応を一層レベルアップさせる営業改革へ

Photo 左から、ソフトバンクコマース&サービスの溝口泰雄社長兼CEO、ソフトブレーンの豊田浩文社長、同社の小田健太開発部長、ソフトバンクロボティクスの吉田健一事業推進本部長

 さて、この発表のポイントはどこにあるのか。それはeレセプションマネージャー開発の背景から見て取れる。

 ソフトブレーンはかねて、モバイル活用を前提としたCRM(顧客情報管理)/SFA(営業支援)システムとして国内導入実績トップクラスの「eセールスマネージャー」を提供してきた。豊田氏によると、「eセールスマネージャーを通じてこれまで4000社を超える顧客企業の営業改革を支援してきた中で、当社は業種業態にかかわらず営業改革を成功に導くノウハウを蓄積してきた」という。

 そんな同社がeレセプションマネージャーの開発に至ったのは、「eセールスマネージャーで蓄積した営業データの新しい活用方法はないか」「今後有望なロボットを新たなデバイスとして活用できないか」「人間とロボットの分業はできないか」といった3つの課題解決に取り組んできたからだ。

 こう説明した豊田氏は「受付は企業とそのお客様が接する絶好の機会だ」と語り、続けて「新ソリューションは受付を営業に変える……」という冒頭の発言となった。

 なぜ、受付を営業に変えられるのか。それは、eセールスマネージャーで蓄積した営業データをPepperによる接客に活用できるからだ。この点がまさしくミソとなる。つまり、既存のeセールスマネージャーのユーザー企業にとっては、受付に有能な“営業マン”を即座に置くことができるわけである。これはロボットを新たなデバイスとして活用したCRM/SFAの進化形ともいえるだろう。

 Pepperを活用した接客対応では、IBMのコグニティブ(認知)コンピューティング技術「IBM Watson」や、マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」との組み合わせも取り組みが進んでいるが、今回のeレセプションマネージャーはすでにアプリケーションが用意されており、eセールスマネージャーでこれまで蓄積された営業データをそのまま活用できる点が異なる。

 ソフトブレーンでは今後、eレセプションマネージャーを人事部門での採用受付やホテル・病院などの受付でも活用できるように、Pepperが話せるコメントやシナリオを随時追加していく計画。また、インプット機能において、訪問内容・人数・目的などの履歴の収集や訪問者をカメラで写真撮影し担当者に通知するといった点も強化していく予定だ。海外販売に向けた多言語対応も視野に入れている。

 さらに、「AI(人工知能)技術も採り入れていきたい。例えば、IBM Watsonを搭載したPepperの活用も今後取り組んでいきたい」(ソフトブレーンの小田健太開発部長)としている。

 会見の最後に、ソフトバンクロボティクスの吉田健一事業推進本部長がこんなことを語っていた。

 「ロボットが人間の仕事を奪っていくのではないかといわれているが、逆に今回のようにアプリケーションとロボットの連携が広がれば、さまざまなビジネスが創出され、むしろ人間の活躍する場が増えていくのではないかと考えている」

 全てのケースがそうなるかどうかはまだ見通せないが、今回のeレセプションマネージャーの活用については、企業にとっては顧客対応を一層レベルアップさせる営業改革につなげることができそうだ。ただ、その際は当然、人間のレベルアップも求められることを覚悟しておかなければならない。

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