IoTと言われても「自社のビジネスにどう生かせるのか」と悩む企業も多いのでは。GEデジタルでは、クライアントと4日間のセッションを行うなかで、IoT導入の方針を決めていくのだという。その方法とは?
あらゆるデバイスがネットワークにつながる「IoT(Internet of Things)」。IT業界のみならず、製造業をはじめとするあらゆる業界がその可能性に注目していると言っても過言ではない。しかしその一方で、実際に自社のビジネスにどう生かせるのか、ピンと来ていない企業も多いのではないだろうか。
2012年に「インダストリアル・インターネット」というビジョンを掲げ、IoTへの取り組みをいち早く始めたGEでは、どのようにIoTビジネスを作っているのだろうか。2015年10月に立ち上がったGEデジタルでインダストリアル・インターネット推進本部長を務める新野昭夫氏にその方法を聞いた。
GEはいわゆる“リーン・スタートアップ”の手法を取り入れた「ファストワークス」というプロセスを製品開発に取り入れていることで有名だ。課題解決を軸とし、素早くPDCAを回していく。他社の課題解決に取り組むときも、このファストワークスの考え方を使うのだという。
「まずはお客さまの課題――われわれは“ペインポイント”と呼んでいますが、これを一緒に考えて深堀りしていく。課題が特定できたところで、現状どういうデータを持っているか、どのようなワークフローなのかを確認してあるべき姿を考えます。そこからわれわれのデータサイエンティストが入り、データの使い方など、課題を解決するための方法を考えるのです」(新野氏)
ポイントとなるのは、最初にGEのソリューションを提示するのではなく、クライアントの課題を徹底的に聞き出すところだ。こうした対話はワークショップ形式で行われ、最終的にシステムのプロトタイプを固めるまでを4日間で終える。課題の抽出に2日、課題解決の方針を決めるのに1日、そしてシステムの要件やプロトタイプ作成に1日というプログラムだ。
ワークショップの参加者が、プロジェクトのリーダーや現場層、情報システム部門などさまざまな立場の社員で構成されるのも、IoT案件ならではの特徴といえるだろう。業務の関係者全てが協力しないとプロジェクトは成功しない。
課題解決のための方針が決まると、ソリューションのプロトタイプを作っていく。仮にうまくいかなかったときには、すぐに方針を変えていく“アジャイル開発”を採用している。ワークショップに参加する社員は、ソフトウェア事業の拠点があるシリコンバレーから連れてきているそうだ。
「答えがないところからお客さまの“本質的な課題”を引き出していくのは、高度なスキルであり、それを持つ人材は多くはありません。セッションの際はユーザーエクスペリエンスの部隊に米国から来てもらっていますが、言語の壁があっても課題を引き出すことができます。今後は日本でも、そういった人材を育てていきたいですね」(新野氏)
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