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» 2016年04月26日 08時00分 公開

田中淳子の“大人の学び”支援隊!:新入社員研修で大切なことは「リスペクト」だと思う

新入社員を厳しく叱咤(しった)し、泣かせるほど過酷な研修がネットで話題になっている。たしてそのようなスパルタ式の教育は効果的なのか? 人材育成に大切なこととは?

[田中淳子,ITmedia]

この記事は田中淳子氏のブログ「田中淳子の”大人の学び”支援隊!」より転載、編集しています。


スパルタ式で本当に成長する?

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 先日、ネット上で「新入社員に厳しく言って泣かせる研修」があちこちで行われているというのが話題になっていて、ちょっとがっかりしました。

 どういう研修を採用しようとその企業の自由ですから、部外者が何か意見をするものではないのですが、一般に研修で「受講者を罵倒する」などあってはならないと私は考えています。

 「おまえなんか採用ミスだ」といわれて、誰が発奮するのでしょうか?

 私が新人だったら、「採ったのは、そっちでしょ」と反論しちゃいそうです。私が新人のとき、新人研修の成績が悪い私に、講師が「あなたには『配属先がない』とどの部署のマネジャーも言ってますが、どうするつもりですか?」と詰め寄ったことがあります。その際、心の中で「採用したのは、会社の方じゃん」とつぶやき、さらに「配属先がないのにどうしますか?」といわれても「分からんよ」と思い、そして30年たってもこうして恨みに思っている……という経験から、「ひどいことを言っても、新人は恨みの記憶としては心に刻んでも、頑張ろう! と前向きにはならない」と思っているのです。

 罵倒して泣かせる、連帯責任とか言って延々と何かをさせる、何かができるまで食事を与えない――など、もはやパワハラ以外の何物でもないように思います。(厚労省の「パワハラ6類型」をご覧ください。)

本当に人を動かすのは何か

 「若い人は精神が弱いから、たたき直さなければならない」という意見もあるようですが、「その研修、ご自分は受けたいですか?」と聞いてみたい。自分が嫌なものを他者に押し付けてはいけない。

 人は、正しく人として扱われたとき、大人は大人として扱われたとき、初めて真面目に相手と関わろうとするものだと思います。

 今、新入社員の研修中ですが、私は新入社員の皆さん相手に決してため口を使うことはありません。丁寧語や尊敬語を使って会話します。「先ほど、〇〇さんが××とおっしゃいましたが、他の方は、他に気付いた点はありますか?」「午前中、リーダーをなさっていない方が午後はリーダーを担当してくださいね」など、きちんと丁寧に会話します。

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 互いに大人同士、対等な存在として認め合うことが、関係構築の初めの一歩だと思うのです。放っておいても年齢差、ポジション差、立場の違いで、相手には「パワー」を感じさせてしまいます。せめて言葉遣いは丁寧に。

 OJTでも同じです。後輩を子ども扱いしておきながら、「大人として一人前になれ」と言っても、そこには矛盾があります。相手を尊重すること。決して忘れてはいけないと思うのです。

人材育成は成長の支援

 講師業は、放っておくと「気持ちよく」なってしまう仕事です。大勢が私の話を黙って聞いてくれるのです。そんなこと、日常生活ではなかなかありません。相手が新入社員だと、だんだんと自分が偉くなったような勘違いをして、どんどん偉そうな話しぶりになってしまうこともあります。

 しかし、あくまでも「成長を支援する」のが仕事なのですから、新入社員の学びが促進するようにサポートすることに意識を集中させる必要があります。

 気を付けないと、つい偉そうに振る舞ってしまいます。新入社員研修は、だから要注意なのです。

著者プロフィル:田中 淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。

日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。

著書:「ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方」(日経BP社)「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。詳しいプロフィルはこちら


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