Oracle OpenWorld 2016では、IaaS領域にも切り込む同社のクラウド分野への転換が全面的に打ち出された。エリソン会長兼CTOは2回目の基調講演でもAWSへの対抗心をあらわにした。
米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催中のOracleの年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」は、従来のSaaS/PaaSに加えてIaaSへの本格参入を表明した同社のクラウド分野への転換を強く印象付ける講演や展示ばかりとなっている。2、3日目の基調講演では、同社の首脳陣から初日の発表内容について詳しい説明が行われた。
会期2日目の9月19日の基調講演には、マーク・ハードCEOが登壇。ハード氏は、世界の経済情勢や企業経営者を取り巻く現状という切り口から、クラウド化の必要性を来場者に訴えかけた。
ハード氏は、世界のGDP(国内総生産)成長率が平均2.5%という中でその4割を中国が占める一方、米国や欧州、日本は平均を下回る成長率にあり、大半はマイナス成長だと指摘した。また、企業経営者は株主から絶え間なく利益を要求され、結果を出せなければすぐ解任される。CEO(最高経営責任者)の平均在任期間は4.5年だとした。
さらにハード氏は、2014年に退任するまで30年以上にわたってCEOを務めたラリー・エリソン会長兼最高技術責任者(CTO)に触れ、IT業界の“名物経営者”であっても、その立場を変えなければならないほどに、ITのビジネスが厳しいとの見方を示す。
企業のIT投資はこの10年でほとんど増えず、その中でクラウドの成長率は44%に達していることから、クラウド以外のハードウェアやソフトウェアなどの製品領域は成長が見込めないという。「利益を出せない経営者はコスト削減に走るしかない」(ハード氏)
ハード氏は、その点で企業システムをオンプレミスから(パブリック)クラウドへ移行することは、セキュリティや可用性、信頼性などあらゆる面で理にかなっているとし、同社は52億ドルに上る研究開発投資の多くをクラウドに費やすことで、数多くの新規顧客の獲得に成功していると主張した。
講演の最後にハード氏は、前回(2015年)のOpenWorldで表明した2025年における企業ITの動向予測をアップデートし、新たな予想を加えた。
ハード氏は、これらの予想の多くが2025年を待たずして実現されるだろうとも語っている。
初日(9月19日)の基調講演でエリソン氏は、SaaS/PaaSに続く新たな成長をIaaSに求めて、Amazon Web Services(AWS)への対抗姿勢を打ち出した。しかし、AWSはIaaS市場で多くのシェアを握ることから、エリソン氏の目論見に懐疑的な見方は多いようだ。ハード氏による基調講演後のメディアとの質疑応答では、同氏にAWS対抗策を問う声が相次ぐ。ハード氏は、以下のように答えた。
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