OracleのエリソンCTO、IaaS注力でAWSに“宣戦布告”Oracle OpenWorld 2016 Report(1/2 ページ)

クラウド分野へのシフトを進めるOracleは、SaaS/PaaS分野の事業が好調に推移していることから、今後はIaaSにも注力するという。ラリー・エリソン会長兼CTOは、「AWSより安く、性能と信頼で勝つ」と力説した。

» 2016年09月19日 15時30分 公開
[國谷武史ITmedia]

 米Oracleの年次イベントとなる「Oracle OpenWorld 2016/JavaOne 2016」が米国時間9月18日、カリフォルニア州サンフランシスコで開幕した。1982年にユーザーカンファレンスとしてスタートし、IT業界最大規模といわれる同イベントに今回は145カ国から約6万人が参加。22日までの4日間で2249のセッションが開かれる。

 Oracle Open Worldは、今年もモスコー二コンベンションセンターを中心に周辺ホテルを含めた複数の会場で開催されている。コンベンションセンター前のハワードストリートを閉鎖し、イベント会場としてパーティーやライブを開くのも例年通りの光景だが、今回は開幕前日の17日夜にニューヨークで発生した爆発事件を受けて、会場内に警察官や警察犬が配備されるなど、やや物々しい雰囲気となった。

モスコー二コンベンションセンター前のハワードストリート。例年はOpenWorld一色に染まるが、講演ホールへの入場では手荷物検査に加えて、不審者を監視する警官や警察犬が配備され、物々しい雰囲気が漂った

“本当”のクラウド時代の幕開け?

ラリー・エリソンCTO

 Open World 2016は、18日夕刻の基調講演からスタート。メインプレゼンターは、同社の顔といえるラリー・エリソン会長兼最高技術責任者(CTO)だ。エリソン氏は、クラウドが新時代のユーティリティコンピューティングをもたらしていると切り出した。

 「クラウド」という言葉がIT業界で使われるように10年近く経つ。もはや日常的な言葉として使われるような状況だが、エリソン氏は企業のIT利用の実態もようやく追いついてきたと指摘する。その理由は、現地時間15日に発表された同社の2017年会計度の第1四半期(2016年6月〜8月)決算にあるようだ。

 全社売上高は前年度同期比2%増の約86億ドルだった。このうちクラウド分野の売上高は同59%増の9億6900万ドルで、全社売上高の1割以上を占めるまでになった。一方、ソフトウェアライセンスなどは約10%落ち込み、この分をクラウドの売り上げが補えるようになってきたという。クラウド分野の売上高の内訳は、SaaS/PaaSが同82%増の7億9800万ドル、IaaSは同7%増の1億7100万ドルで、7四半期連続の増収としている。

 こうした実績を背景にエリソン氏は、SaaSやPaaS、IaaSのメインプレーヤーとしてSaleforceやWorkday、AWS、Microsoftの名を挙げ、クラウド市場におけるOracleの“戦い方”を説明。コスト・信頼性・性能・標準・互換性・安全性の6つの軸を重視するサービスの設計に取り組んできたと強調した。

 クラウド事業の戦略として、SaaSではEPRや人材管理(HCM)、顧客関係管理(CRM)の各種サービスの統合化とメニューの拡充を推進するほか、PaaSではデータベースやFusion Middlewareの使いやすさを高めることでオンプレミス環境からクラウドへの移行をうながす。そしてIaaSでは、エリソン氏が最大のライバルとするAWSへの対抗姿勢を強烈に打ち出した。

エリソン氏は、OracleがクラウドのSaaS/PaaS/IaaSの3つ全てに全力投球すると表明
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