クラウドの普及でビジネスが変わるというのは、よく聞く話ではあるが、どうやらクレジットカード業界にも影響を与えているようだ。クレディセゾンが新たなビジネスチャンスを見いだしたのは、AWSを利用しているベンチャー企業だった。
「カードの限度額に引っ掛かって支払いができず、サービスがストップしそうな会社があるんです……! 何とかなりませんか?」
クレディセゾン ネット事業部 データマーケティング部の磯部泰之さんの元には、AWS(Amazon Web Services)の社員やベンチャーキャピタルの投資家からこんな相談が、頻繁に寄せられる時期があった。
Webやスマートフォンアプリなどでサービスを展開するITベンチャーは、固定費のかかるITインフラを持たず、クラウドを利用しているケースがほとんどだ。中でもAWSのシェアが高いが、利用料の支払い方法がクレジットカードか米国の口座への海外送金に限られる。
そのため、特に社歴が浅く、法人名義でのクレジットカードを持つことができないような会社では、社長の個人名義のカードで支払いを行い、カードの限度額が問題になるケースが増えているのだという。時代の変化で新たなニーズが生まれている――磯部氏はこの問題に目を付けた。
「ベンチャーの方から、『法人用のカードを作りたいんだけど、銀行や他のカード会社に頼んでも、ベンチャーだと審査に通らないので作れない、何とかしてくれないか』と相談されることが、すごく増えてきたんです」(磯部さん)
磯部さんは、ネット事業部の新規事業担当として、アライアンス先となるベンチャー企業と関わる中で、このような話を聞くことが増えたという。同氏によれば、立ち上げ期のベンチャーにおいて、2つの理由でビジネス用クレジットカードへのニーズが高まっている。
1つはAWSや各種SaaS、Facebook広告の出稿など、海外のサービスの利用が増えたことだ。大企業であれば日本の代理店に支払う場合も多いが、小さな会社の場合はカードで直接支払いをするケースが多い。
AWSをはじめとするクラウドは低コストで導入できると言っても、新しいゲームをリリースしたときなど、「予想以上のヒットで費用が膨らんで、限度額のせいで支払いができずにサービスが止まってしまったらどうしよう……」といった悩みを持っている会社が少なくないのだ。
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