ディープラーニングを超える――富士通研究所の「Deep Tensor」は世界に通用するかWeekly Memo(1/2 ページ)

富士通研究所が先週開いた研究開発戦略説明会で、AI技術への取り組みを明らかにした。新たな研究開発の発表では「現在のディープラーニング(深層学習)を超える技術」も披露。果たして世界に通用するものとなるか。

» 2016年10月24日 12時30分 公開
[松岡功ITmedia]

富士通研究所が考えるAIとは

Photo 研究開発戦略説明会に臨む富士通研究所 代表取締役社長の佐々木繁氏

 富士通の研究開発子会社である富士通研究所が10月20日、2016年度の研究開発戦略説明会を開いた。今年4月に同社の社長に就任した佐々木繁氏が、現在研究開発を進めている5つの領域について説明するとともに、それらの中から16件の最新技術について展示・実演を行った。

 富士通研究所が研究開発を進めている5つの領域とは、実世界としてのフロントとクラウドを自在につなげてさまざまな“共創”サービスを実現する「Service-Oriented Connection」、さまざまなサービスに必要な機能やリソースを動的に配分して進化する「Web Scale ICT Infrastructure」、物理ネットワークを意識せずにエンド・ツー・エンドで最適かつ迅速につなぐ仮想ネットワーク「Core/Front Network Fusion」、そして人工知能「AI」、およびAIを活用した「Security」である。

 同社はこれら5つの領域がつながった「ハイパーコネクテッド・クラウド」と呼ぶ世界の実現をビジョンとして掲げている。(図1)

Photo 図1 5つの領域がつながった「ハイパーコネクテッド・クラウド」の実現を目指す富士通研究所のビジョン

 さて、本稿ではこの中からAIに焦点を当てたい。というのは、筆者の記憶では、富士通からビジネス展開に向けたAI技術群「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」についての説明は聞いたことがあるが、その大本である富士通研究所の研究開発における基本的な考え方や最新技術について話を聞いたのは今回が初めてだからだ。

 まず、富士通研究所が考えるAIについては図2をご覧いただきたい。佐々木氏によると、同社のアプローチは「人類が生み出した世界中に散在する膨大な“既存知の構造化”」を図るとともに、「実世界でセンシングされる膨大なメディアや五感情報による“未知の知の獲得”」を行い、これらを組み合わせることによってより付加価値の高い知を創出し、社会受容性の高いAI技術を提供していくというものだ。

Photo 図2 富士通研究所が考えるAI

 このアプローチでポイントとなるのは、既存知の構造化をどのように行い、獲得した未知の知とどう組み合わせてより付加価値の高い知を創出していくかだ。佐々木氏によると、「既存のディープラーニング(深層学習)は未知の知を獲得するための技術」だという。これに対し、既存知の構造化については「対応できる技術がまだ確立されていない」という。同社が狙っているのはまさにその未開拓の技術である。

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