産総研のNEC製スパコン、世界の省エネ性能スパコンランキングで第3位を獲得

NECの「LXシリーズ」を基盤にした産業技術総合研究所(産総研)のクラウド型計算システムが、スパコンの電力性能(速度性能値/消費電力)のランキングで世界第3位を、空冷方式では世界1位を獲得した。このスパコンは中堅・中小企業などもAI/IoT技術に関する研究開発環境として利用できる。

» 2017年06月22日 12時20分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 産業技術総合研究所(産総研)のクラウド型計算システム「産総研AIクラウド」が、世界のスパコンの省エネ性能ランキング「Green500 List」で世界3位を獲得した。また、空冷方式では世界1位になったという。

 Green500 Listは、トップ500のスパコンの電力性能(速度性能値/消費電力)を半年ごとにランキングしているリスト。今回は、ドイツ・フランクフルト市で開かれたスーパーコンピュータに関する国際会議「ISC HIGH PERFORMANCE 2017(ISC 2017)」で、6月19日(ドイツ時間)に発表された。

 産総研AIクラウドは、NECのHPCサーバ「LXシリーズ」を基盤に構築されており、2017年4月から稼働を開始している。中堅・中小企業など、産総研の研究者でなくても、AI/IoT技術に関する最先端の研究開発環境として利用できるのが特徴だ。

 システムは、Intelの「Xeon E5-2600L v4」製品ファミリー搭載のデュアルソケットMPI(Message Passing Interface)コンピュートノード68ノードと、NVIDIAのGPU「Tesla P100」を8基搭載したGPUノード50ノードという2種類の計算サーバで、合計118ノードで構成される。

 総理論性能で人工知能用スーパーコンピュータとして国内最大規模となる8.48PFLOPS(ペタフロップス)の性能を実現した。100GB/秒の情報処理能力を有する4PB(ペタバイト)の大規模並列ファイルシステムも組み込まれている。

 産総研では、AIやIoT技術の活用による研究の維持・強化、企業との共同研究の立ち上げ迅速化と産業界との連携強化、産総研の人工知能研究センターを中心に収集・開発されるデータやソフトウェアの利用促進などを目的に、産総研AIクラウドを導入した。

 産総研AIクラウドを活用することで、産総研が研究を進める「データ・知識融合型AI」や「脳型AI」での利用をはじめとした、ビッグデータ処理の高速実行が可能になるとしている。

 データ・知識融合型AIは、ビッグデータに基づくデータ駆動型のAIと論理的・形式的な知識駆動型のAIを融合して、実世界のデータを深く理解し、人間の意思決定を支援するもの。脳型AIは、脳の情報処理原理に関する神経科学の知見を取り入れて、人間の脳に近いAIの実現を目指すものだ。

 なお、NECと産総研はAI研究で連携し、2016年6月1日に産総研内に「NEC-産総研人工知能連携研究室」を設立。産総研のシミュレーション技術とNECのAI技術を融合させてAIの能力を最大限に引き出す技術などの研究開発を行っている。

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