アクサ生命が気付いた「デジタル変革」の核心――それは人とITの“共存”【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/3 ページ)

» 2017年08月28日 09時00分 公開
[大内孝子ITmedia]
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「デジタルトランスフォーメーション」の先にある、保険の未来

 今やクラウド、ビッグデータ、AIという大きな波が、社会に引き起こす変化は無視できない。企業のデジタルトランスフォーメーションもそうした流れを意識したものだが、当然、生命保険の姿も変わっていくことになる。

 「一般的に、今まで保険会社は、お客さまが新規契約で保険に加入したいとき、あるいは保険金を受け取りたいというときに、紙ベースでやりとりをしていました。保険会社は受領した書類の内容をシステムに入力し、査定をしてお支払いをしていますが、これからはもっと早く保険金の請求ができたり、もっと早く保険に加入したりできる時代は間違いなく来るでしょう。紙ベースのやりとりも、今はオンライン請求へと変わってきています。テクノロジーの発展とともに、会話するレベルのスピード感で契約が進むようになるはずです」(不動さん)

 特に保険の給付請求については、既にアクサ生命でもさまざまな取り組みを行っている。例えば、過去の保険金の請求状況を調べ、どれくらいの金額でどれくらいの日数で払ったか、という記録を分析している。

 保険は、その種類によって請求に必要な書類やプロセスが異なる。例えば、死亡保険では死亡証明書を提出することが義務付けられている。

 一方で通常の医療保険などはどうだろう。5万円、あるいは3万円、10万円など、支払ってもリスクが少ないものならば、時間がかかる診断書や証明書の代わりになるものがないか。給付申請に迅速に対応できる仕組みを作れないか――アクサ生命は、2017年8月にオンラインで給付金請求を可能にするシステムを運用開始し、24時間365日、契約者専用Webサイト「My アクサ」で完結するサービスを導入した。テクノロジーが入りこむ余地はまだまだあるのだ。

photo PCやスマートフォンで利用できるWebサイト「My アクサ」から給付金請求を行えば、支払いまでの日数が大幅に短くなるという

 「即時加入や即時払いができるなど、テクノロジーというのはお客さまの利便性に合わせて使われるものであるべきです。本来、保険会社はお客さまに健康でいてもらうことが一番なので、そのためのサービスを提供するといった方向性も考えられます。ITによって、病気への対処から予防へと、保険の姿が変わっていくかもしれません」(不動さん)


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 人とテクノロジーをどう共存させるか――。海外から日本へ、そしてB2BからB2Cの世界へ。さまざまな視点を経験する中で、不動さんはデジタルトランスフォーメーションを進めるにあたって重要な「考え方」を得た。

 「全体をふかんし、どこに課題があって、何を整理すれば物事が進むのかを考えることを意識しています。『これとこれがあるからできない』ではなくて、『何と何ができたら、何ができるのだ』と発想を変えなければいけません。そういう意味では、ビジネス部門、IT部門に関係なく、変わっていく時代や状況に機敏に対応し、適応する力を養うことが大事ですね。

 そして、もう1つ大事なのは想像力です。『自分たちが見えている範囲だけで、世界が終わっているわけではない』ということ。当たり前なことのようで難しいです。そのためにも、他者と協力することが必要ですし、自らが生み出している価値を常に考え、目標として共有することが大切なのだと思います」(不動さん)

特集:Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜

 ビジネスのデジタル化が急速に進む今、事業や企業そのものを変えるために、これまでと異なる考え方や人材が必要になっています。

 システム企画と実装、業務部門とIT部門など、異なる部署や仕事の境界に立ち、それを飛び越えてつないでいく――そんな「越境」を通じて、さまざまな視点や考え方を得ることで、初めて変革を導くことができるのではないでしょうか。

 本特集では、越境に成功したり、挑戦したりする人間にスポットを当て、彼らが歩んできたキャリアやITに対する考え方に迫っていきます。

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