難しいITの話を分かりやすく説明するための「プレゼン3原則」ITソリューション塾(1/2 ページ)

難しい話を分かりやすく説明するためのコツを解説します。

» 2017年09月17日 10時00分 公開
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 「分かりやすい説明を心掛けています」――。これが私の講義のモットーだ。

 ただ、分かりやすいかどうかは、相手によりけりであり、相手の知識や経験のレベル、つまり、相手のコンテクストにどれだけ寄り添うかということでもある。

 例えば、大手企業のCIOを相手にしたイベントで、前日に投票が行われたAKB48総選挙のホットな話題を持ち出してつかみをとろうとしたが、「何のことやら」と場がしらけてしまったという話を聞いたことがある。

 相手の関心事や知識レベルを想像して話題を用意しなければ、せっかくのメッセージもうまく伝わらないのだ。

 難しい内容を、その前提知識がない人にどう伝えるかは、特に難しい。そんなときに私が気を付けているのは次の3つだ。

原則1: 伝えたい本質を明確にする

 知っていること、調べたことを全て伝えようとすると、何が本質で、何が補足的なことなのかが分かりづらくなり、相手を混乱に陥れる。例えば、やたらと1ページに文字が詰め込まれたチャートなどはその典型だ。そういう資料を見ると、「この人は、自分でも何が大切なメッセージなのかが分かっていないのだな」と思えてしまう。

 また、「漏らさず伝えなければいけない」という使命感に燃え、“これでもか”といわんばかりにゴチャゴチャといろんな要素を詰め込んでいる資料もある。お役所や元公社系の企業などに多い。

 いずれにしろ、このような資料や説明は、本当に分かりにくい。これでは、「情報は全て提供したから後は自分で整理してね」と言っているのと同じで、「分かるかどうかは、あなた次第」と丸投げしているに等しい。

 また、1ページにひと言、あるいは1つの図形要素だけを描き、やたらとページが多いプレゼンテーションも分かりにくい。その1つの要素をきっかけとして自分の考えをどんどんと広げ、再びその結論として、その文字や図形に戻ってくるのなら、「なるほど!」と思えるし、「たいした展開力だ」と感銘も受ける。しかし、そこで書かれていることと語っていることの情報量が同じで、だだ字幕のようにチャートを使っている場合は、「ああ、なんて薄っぺらだろう」と思うし、“ゴチャゴチャチャート”と同じで、「本質はあなたが見つけてください」と言うのと大して変わらない。

 「この1枚でこれを伝えたい」――。そのために一番大切な言葉や図形は何かを追求してこれに絞り込む。補足の情報は思い切って捨てる潔さが必要だ。

原則2: 相手のコンテクストによりそう

 冒頭で触れた通り、CIOにAKB48のコンテクストは難しいだろうが、新入社員ならうまくいくだろう。ただ、この手の芸能モノには趣味の違いや好き嫌いがあるので、扱いは難しい。

 だから、もっと一般的なこと、例えば動物やスポーツ、学生時代に習う有名な歴史的出来事などを使うといいだろう。あるいは、企業の社内研修なら、その会社に関わる製品やサービス、関心事などを話題にする。そいうことを例え話として持ち出すことで、相手の理解を助けることになる。

 ただ、これはもろ刃の剣で、こちらの理解と相手の理解が違っていると、誤った解釈をもたらしてしまったり、混乱を招いてしまったりする恐れもある。そのため、相手の反応を見ながら、うまく伝わっているかどうかを感じ取り、言葉を選び取っていく必要がある。

原則3: 自分が知らないということを自覚させる

 自分が「知りたい」と思わなければ、講演者の言葉など頭の上を通り過ぎてしまう。だから、聴講者が始めて聞くような話で驚かせることも1つの方法だ。

 例えば、新入社員を相手にするときに、講義の冒頭で「Amazon Go」や「Amazon Echo」のビデオを流し、「世の中はこんなことになっているけど知ってた?」と問いかける。あるいは、難しい事前課題をやって来てもらって、いかに自分は知らないかを自覚してもらう。

 または、講義の途中で「質問を考えるグループディスカッション」を行う。私の講義では、4人くらいで講師への質問を考えてもらうのだが、それぐらいの人数でやると、よく勉強している人とそうでない人が必ずいて、勉強していない人は「まずい」と気付き、ちゃんと聞かなくては思い、勉強している人は「よーし」と思い、さらに学習へのモチベーションが高まる。

 こんな工夫が、「知りたい」という気持ちを高め、考えながら聞いてくれるようになるので、理解が進み、結果として「分かりやすさ」につながる。

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