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» 2017年10月12日 08時00分 公開

真説・人工知能に関する12の誤解(8):人はなぜ「人工知能に自我が芽生える」と思ってしまうのか (2/4)

[松本健太郎,ITmedia]

 もちろん、プログラムの作り手は、受け手がコミュニケーションできていると感じる(錯覚する)ように工夫します。返答内容の精度が高く、「まるで人のようだ」と認識されると、エンジニアはとても喜ぶわけです。

 特に「受け手の知覚が重要である」という認識が広まってからは、受け手が違和感を抱かないようにする工夫が重要視されています。例えば、日本マイクロソフトが開発しているAI「りんな」に対して「乳首ドリルすんのかい、せんのかい」とメッセージを投げかけてみてください。

 関西人であれば「ドリルすんのかーい!」と返すはずですが、りんなは「【◎◎】って言ったの?」などと、こちら側の意図(文脈)とずれた解答を返すことも多いです。一見会話が成立してないようにも聞こえますが、エンジニアが最も避けたいのは、コミュニケーションをするモチベーションを削いでしまう「分かりません」といった無味乾燥な答えなのです。

 コミュニケーションにおいて重要なのは、発信された内容を“知覚した”と、送り手に理解してもらうことです。そのため、質問に対する完璧な解答が用意されていない場合でも、“それっぽい”ことを返すようにできています。

photo 日本マイクロソフトが開発する女子高生AI「りんな」

 また「女子高生AI」という設定上、少しくらい的外れな解答をしても、面白がる人は多いように思いますし、一般的な女子高生が知らないような、難解な単語の意味を完璧に答えられても、キャラクターが持つバックグラウンドや世界観が崩れてしまいます。東京出身(という設定)のりんなが「ドリルすんのかーい!」と返せなくても、それはそれで設定に沿っているといえるのです。

 こうした細かな芸や努力の積み重ねで、多くの人は「AIとコミュニケーションが成立している!」と感じ、驚くのです。Pepperの記者発表会で、孫社長と流ちょうにコミュニケーションをしているように見せるために、「よしもとロボット研究所」が演出を手掛けたのは有名な話でしょう。

 従って「このまま人工知能が高度に発達して、自我が芽生えたらどうするのか」と問われても、「話が飛躍している」と戸惑ってしまうのです。エンジニアからすれば、「子供のころに遊んでいた、喋る人形が心を持ったらどうするの?」と聞くのと同じようなこと。それはアニメの世界の話です。

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