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» 2017年10月12日 08時00分 公開

真説・人工知能に関する12の誤解(8):人はなぜ「人工知能に自我が芽生える」と思ってしまうのか (3/4)

[松本健太郎,ITmedia]

「チューリングテスト」と「中国語の部屋」

 「機械を人間のように錯覚する勘違い」に対する取り組みと批判は、実は古くからあります。1950年にはアラン・チューリングが「Computing Machinery and Intelligence(計算する機械と知性)」という論文の中で、「機械は人間のように思考できるのか」(機械に知能があるのか)を判定するためのテスト(チューリングテスト)を提案します。

 テストの内容は極めて単純。審査員が、隔離された部屋にいる人間と機械に対して、それぞれ会話を5分間行います。会話を通じて、機械と人間との確実な区別ができなかった場合、機械はテストに合格し、人間と同じように思考できたことにする、というものです。

 つまり、チューリングは「機械は思考できるのか」という問題を「機械は(動作を除いて)人間と同じことをできるのか」という問題に代替したのです。

 そのため、チューリングテストでは、人間も機械も“人間らしく”振る舞います。機械は「人間だと思われるフリ」をしますし、人間は「本当に人間だと信じてもらおう」とします。とはいえ、声色の差で機械だと見抜かれては意味がないので、あくまで、会話は文字のみとなります。まさに検証環境はチャットボットと似ていますよね。

photo 人工知能を知的と呼べるかどうかを判断する「チューリングテスト」に合格したエピソードは大きな話題となりました

 2014年には、英国で開催されたイベントで、13歳の少年であるユージーン・グーツマン君が審査員の33%に「人間」だと判定され、チューリングテストとしては初めて合格しました(30%以上で合格)。もちろんユージーン君は人工知能のプログラムです。

 この検証に対して、真っ向から反論したのが、米国の哲学者ジョン・サールです。彼は「機械は知能があるかのように受け答えをしているが、意味を理解せずに答えているだけなので、知能があるとは言えない」として「中国語の部屋」という思考実験を提唱しました。その内容はこうです。

 仮に、英語しか理解できない人間が部屋にいるとします。部屋には、英語しか理解できない人でも、中国語で受け答えができてしまう完璧な説明書があります。では、部屋の外から中国語で質問を投げかけ、その説明書を見ながら中国語で返答した場合、その意味は分かっていなくても解答をするのは思考をしているといえるのか? という反論です。

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