インタビュー
» 2018年05月21日 09時30分 公開

ただの客寄せか、省人化の救世主か:「Alexa居酒屋」はなぜ生まれた? オーダーシステム開発の苦労とその可能性 (1/5)

スマートスピーカー「Amazon Echo Dot」に話し掛けて注文を行う“Alexa居酒屋”の実証実験が、東京・渋谷の居酒屋「天空の月」で始まった。居酒屋でスマートスピーカーは活躍できるのか。プロジェクトの裏側とボイスUIの可能性に迫った。

[大内孝子,ITmedia]

 「焼酎の3番を1杯、ロックで」「やっぱり2杯で」「ご注文は、黒七夕芋のロックを2杯です」

 東京・渋谷にある居酒屋「天空の月」。何の変哲もない注文のように見えるが、彼らが話している相手は店員ではない。スマートスピーカー「Amazon Echo Dot(以下、Amazon Echo)」だ。

 同店では、Amazon Echoに話して注文ができる「Alexa(アレクサ)オーダー席」の実証実験を2018年3月19日に始めた。このニュースは、Webメディアを中心に大きな注目を集めたが、実用性はどうなのだろうか。実際に同店に行き、開発者に話を聞いてみた。

photo Alexaオーダー席。人数は2人から8人まで。スタッフが待機するレジカウンターのすぐそば、出入口近くの個室がAlexaオーダー席になっている

スマートスピーカーでお酒を注文、その裏側は?

 Alexaオーダー席が発表された翌日には、27組(およそ100人)の予約が入るなど、反響は大きく、1カ月以上がたった今でも、平日の予約は埋まってしまうという。取材当日も、開店時からAlexaオーダー席は埋まっていた。

 スマートスピーカーで注文ができるのは、ビールを除く飲み物のみ。オーダーをするにはまず、「Alexa、飲み物メニューを開いて」と話し掛ける。これがスキル(アプリ)の起動コマンドとなり、以降、音声でのメニュー受付が始まる。

 メニューはサワー、日本酒、焼酎というジャンルでカテゴリ分けされ、具体的な項目は番号で指示する。「サワーの5番を2杯」という感じだ。「やっぱり違うのがいい」「私も同じのがいい」といったシーンにも対応できるよう、「やっぱり焼酎の1番を1杯」などと言えば、オーダーを上書きできる。もちろん、注文のキャンセルも可能だ。その他、店員を呼んだり、会計をお願いしたりする機能などもある。

 Alexaが受けたオーダーは、店長が持つiPadにインストールされた「ChatWork(チャットワーク)」に送信される。それを受けて注文を通したり、店員が呼ばれたり、会計の指示を行ったりする仕組みだ。現状は裏側で人間がフォローするという形で運用している。

 クラウドサービスであるChatWorkは、導入コストも開発コストも安価で済む。ハードウェア面でも、Webブラウザが動作するタブレットと安価なスマートスピーカーがあればいい。店舗側としてもハードルが下がるのだ。こうしたオペレーションフローについて、店舗のスタッフも特に違和感はないという。

 Alexaオーダー席を利用する客層はバラバラで、初めてスマートスピーカーを体験するという客もいるという。そのため、最初に店員がテーブルに入り、注文のデモを行うそうだ。どんな質問をしても答えてくれると思っている客もいるようで、Alexaが答えられないと「なぜ?」と疑問に思うシーンもあるようだ。

 「初めての体験という点も含めて、お客さまに楽しんでいただいています。Alexaが反応してもしなくても盛り上がります。注文以外の話でAlexaに話し掛ける人も多いですね。『Alexa、君は女の子なのかな?』とか。スリーサイズを聞く方もいましたよ(笑)」(天空の月 店長)

 料理のオーダーには対応していないが、それでも飲み物を“つい頼んでしまう”という効果はある。今後、Alexaオーダー席の増席も検討しているそうだが、オーダーの最終処理が人力であるため、スタッフの負担との兼ね合いで難しい点もある。今後は、飲食店で使われるオーダーシステムと同等の機能を持たせることも視野に入れているという。

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