「あずきバー」などの商品で知られる井村屋グループ。社長の「ある一言」がきっかけで、老朽化していた自社のITをBoxで刷新したが、検討当初の段階ではBoxは眼中になかったのだという。
「メール添付ファイルの暗号化は、一体うちではどうなっているんだ。企業として、ちゃんと対応はしているのか」
アイスキャンディー「あずきバー」や、「肉まん」「あんまん」などのロングセラー商品で知られる老舗企業、井村屋グループのシステム部に大西安樹社長の一声が響いたのは、2016年のことだった。
井村屋グループは、1896年に三重県で創業して以来、小豆を中心としたさまざまな食品を扱ってきた。日本全国をはじめ、中国や米国などの海外にも製造拠点を持つ。現在は、食品や調味料製造、不動産など幅広い商材を手掛け、1000人以上の従業員を抱えている。
そんな同社で例の一言が持ち上がったのは、大西氏が付き合いのある他社から「井村屋さんは、メールの添付ファイルを暗号化していないんですね」と指摘された直後だったという。企業がメールでやりとりする添付ファイルは、機密情報を含むケースがあり、攻撃者から狙われやすい。そうした観点でも、添付ファイルのセキュリティは重要だ。
ふたを開けてみると、たちまち深刻な事実が発覚した。同社でシステム部の部長を務め、2018年6月に「Box World Tour Tokyo 2018」で講演した岡田孝平氏は、「ほとんどの社員は、添付ファイルの暗号化など気にも留めていなかった。一部の社員は、社外の無料ソフトを使ってファイルを暗号化しており、いわゆる『シャドーIT』が横行していた」と振り返る。当時、同社は自社サーバを運用していたが、長年の使用で老朽化し、業務用ファイルを暗号化するには容量不足だった。
社長の一声を受けて、「メールの添付ファイルを暗号化し、パスワードを発行するツールを探し始めた」という同社は一転、2017年にBoxを導入し、各拠点間の書類のやりとりから製造現場で使うマニュアル管理まで、業務の大幅な電子化やクラウド化に成功した。現在は、全国の社員がオンラインでいつでも、どこでも作業できる環境づくりを行う「働き方改革」のツールとしてBox活用を進めている。
「当初は、Box導入の検討さえしていなかった」という同社は、一体なぜBox導入を決断し、社内のIT環境を刷新するに至ったのか。
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