Fintech企業は脅威ではなく仲間――三菱UFJ銀行の経営トップが語る「デジタル変革」への覚悟Weekly Memo(1/2 ページ)

日本IBMが先週開催した自社イベントで、三菱UFJ銀行の経営トップが「デジタル変革」について講演した。その内容を基に金融サービスの今後について考察したい。

» 2018年06月18日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]

デジタライゼーションを構造改革の柱に

 「先進的な技術やビジネスモデルを有するFintech企業は当初、既存の金融界にとってディスラプター(破壊者)だと捉えられていたが、今では協業によって新しいビジネスを生み出す“イネーブラー”に変わってきている」――。三菱UFJ銀行の三毛兼承 取締役頭取執行役員は、日本IBMが先週都内ホテルで開催した自社イベント「Think Japan」の基調講演でこう語った。

Photo 講演を行う三菱UFJ銀行の三毛兼承 取締役頭取執行役員

 この発言は非常に興味深い。なぜならば、「Fintech企業は脅威ではなく仲間」だとしたうえで、自らが真のディスラプターとして突き進むことを意思表示しているように受け取れるからだ。果たして、三菱UFJ銀行はディスラプターに向けてどのような取り組みを行っているのか。

 三毛氏の講演テーマは「三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の経営戦略〜デジタルを活用した事業変革への挑戦」。メガバンクの経営トップが「デジタル変革」をテーマに講演を行うのは、筆者の記憶ではこれまでなかったことだ。それだけでも時代が変わってきたことを感じさせる。

 では、講演の内容を見ていこう。三毛氏はまず、経営を取り巻く環境として「経済成熟化・成長力の鈍化」「超低金利の継続」「少子高齢化で経済成長も困難」「異業種も含めた競争圧力」といった不可逆的な構造変化が起こりつつある中で、既存のビジネスモデルを見直す必要があると判断したという。

 同氏はビジネスモデルへの課題として、「店舗網(チャネル)」「顧客基盤」「人材」の3つをピックアップ。チャネルでは「全国津々浦々にありながら、それを生かした店舗運営ができているか」、顧客基盤では「3400万人の個人、130万社の法人顧客それぞれのニーズに応えることができているか」、人材では「大量採用世代の社員の退職増加が見込まれる中、スキルを持った従業員が本当にその能力を十二分に発揮できているか」といった課題があるとし、これらは従来の延長線での対応に限界があることから、2018年4月にスタートした新中期経営計画において、体制や枠組み変更を含めた「11の構造改革の柱」によるビジネス変革への挑戦を掲げた。

 図1が、その新中期経営計画の全体像である。この中で、1番目に挙げられている「デジタライゼーション戦略」が構造改革全体を貫く柱になっているのが、最大のポイントである。

Photo 図1 新中期経営計画の全体像
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