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» 2018年06月25日 12時00分 公開

新規農家をAIで救いたい:創業70年目の挑戦 農用機器メーカー「ネポン」がクラウドサービスを進化させる理由 (1/3)

タブレットで農業ハウスを遠隔管理できるサービス「アグリネット」を提供するネポンは、もともとITベンダーではなく、創業70年の農用機器メーカーだ。社内からの批判もあったという同社が、クラウドサービスにまい進する理由とは。

[高木理紗,ITmedia]
photo ネポンのアグリネット開発部部長を務める太場次一氏

 それまで全くITに触れたことのない農家が、タブレット1台で農業ハウスの状況を把握し、ハウス内で稼働する空調など、あらゆる機械を制御して自分の作物に最適な栽培環境を作れる――農家向けクラウドソリューション「アグリネット」を提供しているのは、よくあるIT企業ではない。創業70周年を迎える老舗農用機器メーカーのネポンだ。

 長年農家の支援を続け、クラウドサービス進出時には「社内からの批判が最大の壁だった」という同社は、なぜそれでもサービス提供に踏み切り、今何を目指しているのか。IBMのイベント「Think Japan」で講演したネポンのアグリネット開発部長、太場次一氏に話を聞いた。

老舗の農用機器メーカーは、なぜクラウドサービスに進出したのか

 1948年に創業したネポンは、家庭用、業務用のボイラーや衛生機器の他、ハウスの中で作物を育てる農家向けの暖房機器や空調機器、潅水機器などを売る機器メーカーだ。しかし、農家が減り、農用機器が売れなくなるという危機的な状況に直面した2000年代、思い切った挑戦に乗り出した。

 「これまで農家とやりとりするなかで蓄積した栽培ノウハウを、サービスにできないかと考えた」(太場氏)

 同社は、ハウスの機器を稼働させるために農地に電源を引くノウハウを持っていた点を生かし、農用機器をネットワークにつないで外から管理できるクラウドサービスを構想。2012年に「農家専用のクラウドサービス」として、アグリネットが生まれた。2018年までに、3000件以上の農家がアグリネットを導入したという。

 太場氏によれば、同サービスの特徴は、マニュアルを読みたがらないようなユーザーでも使える直感的な操作と、かつ「今自分が何をすべきか」を一目で判断するための要素をそろえたUI/UX(ユーザーインタフェース/ユーザーエクスペリエンス)を、実際に農家のフィードバックを得ながら作り上げた点だ。

photo 「アグリネット」の構成

 例えば、農家が運営する各ハウス用に、作物の特性や管理のニーズに合わせて構成した「管理画面」と「制御画面」のうち、前者は、温度や湿度、日照量、二酸化炭素濃度などを含む多様なセンサー情報を15分単位で可視化し、カレンダーや農薬散布情報、栽培情報の共有機能、コミュニケーションツールといった機能を備える。後者はハウスで稼働する複数の機器の状況を可視化し、天候の変化などに合わせて遠隔制御できる。

altalt 「アグリネット」の管理画面の例

 また、「高温が数分続いただけで作物がダメになってしまう」という繊細な栽培管理のニーズに合わせ、異常な値を検知した場合の警報機能などをそろえることで、タブレット1台でのリアルタイム管理を可能にしたという。

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