中小企業の経営課題を二人三脚で解決――中小企業向けの無料相談サービス「よろず支援拠点」の使い方目からうろこの行政サポート活用術(2/3 ページ)

» 2018年09月12日 07時00分 公開
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支援事例に見る、ビジネス課題解決の流れ

 よろず支援拠点が行う「支援の輪郭」が見えてきたところで、次は、よろず支援拠点が公開している過去の事例から、具体的な支援内容を見ていこう。

事例1: 老舗旅館をITで活性化。自慢のクエ料理をアピール

  • 相談した企業: 和歌山県の老舗旅館
  • 支援ポイント: “ならでは”を探して、それをアピール。集客にはITを活用

 この旅館とよろず支援拠点の出会いは、よろず支援拠点のセミナーに旅館のオーナーが参加したことだった。セミナー終了後、オーナーは和歌山のよろず支援拠点に協力を依頼。そこからオーナーとコーディネーターの二人三脚の復活が始まる。以下、箇条書きでその足取りをたどろう。

  1. まずチーフコーディネーターが旅館を訪ね、旅館設備の様子や決算書を確認し、オーナーに現状をヒアリング。
  2. 設備老巧化の修繕費用は、すでに金融機関より借り入れがあり、難しいことが判明。そこで最初の目標を、宿泊客の増加による売上アップに絞る。 =【第一目標の設定】
  3. 次に、集客への問題として「宿泊予約サイトの活用が不十分」「宿泊プランの工夫不足」を確認。逆に、強みは「クエなど、地元の新鮮な食材によるおいしい食事」であることを再発見。 =【相談しつつ強み・弱みを知る】
  4. 宿泊に関する専門家を別途アサイン。この専門家の助言を受けつつ、宿泊予約システムの導入を進める。この導入費用に、オーナーは費用対効果を懸念したが、チーフコーディネーターへの信頼もあって、苦しい中費用を捻出。やはり両者の信頼関係が重要であることを再認識。 =【詳しいスタッフの導入、めりはりある投資の提案】
  5. 同時に、国内外10以上の予約サイトに登録。ネットからの予約を増やすことに注力する。
  • 結果: 支援開始後2年間で、売上は2倍に。ネット経由の予約が支援前の3倍に。経常利益の黒字化を達成した。ポイントは、支援開始後から予約客の動向に留意し、宿泊プランの内容、料金の小まめな見直しを実施。クエ料理プランや旅館前での海釣り体験プランなど、新たな提案も実施した。
  • Next: 売上向上に支えられ、新たな経営改善計画を策定。追加融資を受けられるようになり、老朽化した設備の一新が始まった。

事例2: 客足が伸びない整骨院。IT活用の方向を変えて成功

  • 相談した企業: 宮崎県の整骨院
  • 支援ポイント: 顧客ニーズの見直し、アクセス解析でWebページを改善

 よろず支援拠点の「Facebook活用セミナー」参加で、個別相談を受けたことがきっかけとなった。「取りあえず作っただけ」だったWebページが、顧客にとって魅力あるWebページに生まれ変わった経緯を紹介しよう。

  1. 地元で整骨院を開業。数カ月たっても稼働率は50%と低かった。院の紹介はWebページで実施。さらにFacebookもやれば、効果があるだろうと考えていた。
  2. よろず支援拠点のコーディネーターは、整骨院へのニーズとFacebookの役割は合わないと判断。まずは「痛みが起きたら、整骨院を探す」という基本ニーズに立ち返り、「今すぐ通える整骨院はどこ?」という検索に対応できるよう、Webページの改善を提案。 =【顧客が気が付かない問題点の把握】
  3. Webページを整理し、アクセス解析を実施。すると、スマートフォンからのアクセスが75%であることが判明。加えて、アクセスの多い曜日や、ユーザーが知りたい情報も判明し、「土日診療」という検索ワードが有効と判断。 =【アクセス解析で顧客ニーズを明確に】
  4. すぐに顧客が理解したい情報として、「土日も19:30まで受付」を掲載し、1タップで予約電話可能といった機能も追加した。
  • 結果: 支援開始後10カ月で、土日平日を問わず稼働率が90%に。ポイントは、アクセス解析から有効な改善提案をひねり出せたこと。整骨院のスタッフと相談しながら行えたため、効率よく作業が行えた。
  • Next: 現状の設備ではこれ以上の売上を見込めないので、設備増強の持続化補助金を申請。めでたく採択され、増床で売上アップを目指す。

Photo 整骨院の様子やITによるアピール方法の紹介(出典:中小企業基盤整備機構「平成28年度 よろず支援拠点成果事例集」

事例3: IT設備業者として起業後、コンサル業務も加え1年後に7社と取引

  • 相談した企業: 福島県のIT設備業兼コンサルティング
  • 支援ポイント: 助言にそって対応業務範囲を拡大。ミラサポへの登録で顧客とのつながりも

 地元のIT設備企業に就職し、PCのメンテナンス業務から、通信工事、ネットワーク保守などの経験を積み、VPN設計などの業務も行っていたが、勤務会社の縮小をきっかけに起業を目指した。

  1. 起業に必要な資金調達のため、事業計画書作成からよろず支援拠点の協力を仰ぐ。さらに販路拡大の相談で、従来のPCの修理や通信施工だけでは厳しいと判断され、新たな方向性の模索を始める。 =【計画書の作成。同時に販路拡大などの相談を実施】
  2. 受注機会拡大のために、修理する・工事するだけでなく、1つ1つの業務をコンサルティング志向で対応すべきとよろず支援拠点から提案される。そこぶ顧客に訴求するために、自らITコーディネーターの資格取得を進める。 =【業務を広げるためのコンセプト提案と、そのための具体策の提示】
  3. コンサルティング志向の業務をアピールし、政府系金融機関から融資を取得。起業後すぐにITコーディネーター資格も取得。一般社団法人みちのくIT経営支援センターとミラサポにも登録。 =【自前の営業網に加え、国の紹介システムの活用】
  • 結果: 起業後1年待たずに、IT関係の設備工事受注を土台に、コンサルティング業務も数多く受注し、これまでに7社との取引を獲得。
  • Next: 自身も「専門業であるIT設備工事を核に、コンサルティング志向で新たな業務に携われる」と、将来性に期待を持つ。

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