主要ベンダーのクラウドストレージサービス総まとめ(MS、Google、IBM編)AWS対Azure対Google対IBM(後編)

主要ベンダーのクラウドストレージサービスには当然ながら類似点と相違点がある。構築するシステムやアプリケーションによっては、その違いが致命的になることもある。各社の違いを理解しておこう。

» 2018年09月19日 10時00分 公開
[Antony AdsheadComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 9月5日号掲載)では、クラウドストレージサービスの概論とAmazonのサービスについて解説した。

 後編では、Microsoft、Google、IBMのサービスを紹介する。

Microsoft

 「Azure Blob Storage」は、Azureのオブジェクトストレージサービスだ。このサービスは、ブラウザやクライアントへのファイルサービス、音声と動画のストリーミング、バックアップ、アーカイブ、DR、分析(オンプレミスまたはAzureホスト型)を提供することを目的とする。

 Azure Blob Storageの考え方は、データを“BLOB”(訳注)で保持することだ。これにより、量に制限を設けずにコンテナ内部に保管できる。同様に、ユーザーのストレージアカウント内にも保持できる。URL、AzureのREST API、PowerShell、コマンドラインインタフェース(CLI)、Azureのクライアントライブラリを利用してアクセスできる。

訳注:バイナリデータを格納するデータ型。Binary Large Objectの略称とされるが、開発者は何の頭文字でもないと語っている。

 「Azure Files Storage」は、サーバメッセージブロック(SMB)、RESTインタフェース、Azureのストレージクライアントを利用してアクセスできる。複数のアプリケーションやVMからボリューム単位にアクセスできるようになっていて、Windows、Linux、Macなどのクライアントを問わず、URLを使ってどこからでもアクセスできる。「Active Directory」によるアクセス管理も予定されているが、まだ利用できない。本稿執筆時点では、Shared Access Signature(SAS)トークンを生成することで、指定した期間内であれば指定したファイルへのプライベートアクセスが許可される。

 「Azure Disk Storage」は、「Premium SSD」「Standard SSD」「Standard HDD」という3階層のパフォーマンスを用意している。どれを管理対象にし、どれを管理対象外にするかを選択できる。管理対象外のディスクの作成時は、管理とスケーリングをユーザーが行う。例えば、VMのパフォーマンスを制限しないように、ストレージアカウントの使用を定期的にチェックする必要がある。

 AzureのディスクはVM専用の仮想HDDで、他の場所からアクセスする必要のない永続データをVMに提供することを目的としている。

Google

 「Google Cloud Storage」はクラウドオブジェクトストレージサービスだ。このサービスは、アクセス頻度によって4段階のクラスに分けられる。目的は、メディアストリーミング、分析、バックアップ、データアーカイブなどだ。

 「Cloud Filestore」はファイルアクセス型ストレージで、現在はβ段階だ。このサービスは「Google Compute Engine」インスタンスにNASアクセスを提供する。その際、キャパシティーとIOPS(1秒当たりに処理できる入出力)を顧客要件に応じて調整できる。ターゲットワークロードは、メディア処理、Webコンテンツ、ホームディレクトリだ。

 優れたパフォーマンスを誇るクラウドブロックストレージサービス「Google Persistent Disk」は、Google Compute Engineまたは「Google Kubernetes Engine」で実行されるインスタンスのVMとコンテナストレージを目的とする。

 料金に影響するのは容量のみで、IOPSには課金されない。このサービスは、フラッシュストレージやHDDを最大64TB提供する。マルチリーダーのマウントでは、多数のVMが1つのPersistent Diskにアクセスでき、データの保護がスナップショットを通じて行われる。

 「Cloud Memorystore」は、アプリケーションキャッシュへのアクセスの遅延を数ミリ秒に抑える必要があるアプリケーションで使用するインメモリデータストアだ。このサービスは現在、オープンソースのデータベース管理システム(DBMS)「Redis」と連携するよう最適化されている。サービスはストレージ層で提供され、1時間当たりのGB単位で課金される。

IBM

 IBM Cloudのブロックストレージは最大12TB、4万8000IOPSまで追加プロビジョニング可能な、容量とパフォーマンスが最適化されるディスクを提供する。スナップショットとレプリケーションを利用できるが、レプリケーション単体でも利用できる。

 IBMのファイルストレージは、NASボリュームへのNFSアクセスを提供する。このサービスは0.25IOPSから10IOPSまで4段階のパフォーマンスティアから選んで購入できる。

 同社のオブジェクトストレージはデータを分割して複数拠点に分散することで、99.999999999%の信頼性を確保する。コンプライアンス上の理由によって、データを複数地域に保管することも1つの地域やデータセンターに収容することもできる。

 オブジェクトストレージは、アクセス頻度に応じて「Standard」「Vault」「Cold Vault」という3つのクラスから選択できる。「Query-in-place」機能により、IBM Cloudのオブジェクトストレージのデータで分析を実行できる。

 IBMはクラウドストレージアーカイブサービスのプレビュー版も用意しており、1GB当たり0.002ドル(月額)という低価格で利用できる。

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