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» 2018年11月26日 07時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:大量の書類仕事で疲弊した現場は、RPAを見て泣いた――双日で“ボランティア”が始めたプロジェクトが全社に広がるまで (1/2)

総合商社として知られる双日で、ITとは無縁の仕事をしていた社員が始めたRPAプロジェクトが脚光を浴びている。開始から1年足らずで全社規模に成長したプロジェクトを後押ししたものとは、一体何だったのか。

[高木理紗,ITmedia]

経理畑一筋の社員が、ある日RPAに目覚めたきっかけ

 「業務効率を上げたい」「残業を削減したい」――企業がRPAに乗り出す理由はさまざまで、その起点は必ずしも経営層や情シスとは限らない。業務をよく知る現場がプロジェクトの推進役を担う場合も多いが、たった1人の経理が数人の仲間とボランティアで始めたRPAが、全社2400人を巻き込む一大プロジェクトになった例がある。

photo 双日のビジネスイノベーション推進室RPAチームのリーダーを務める石井俊樹さん

 2004年に当時の日商岩井とニチメンが合併してできた双日は、自動車からITまで幅広い商材を扱い、全世界にグループ会社を展開する総合商社だ。現在、新たに発足した同社のRPAチームを率いる石井俊樹さんは、現在のポストに就く前、同社で10年間経理を担当していたという。それまで経理畑一筋だったにもかかわらず、なぜRPAを担当することになったのか?

 「双日では、『自動車』『IT』といった商材別に分かれた各営業本部に担当経理の組織があり、単に税務や会計の仕事をするだけではなく、どう業務が動き、どのタイミングでどの書類が回るかといった点を把握しているんです。そのため、経理の仕事をしていた当時から、いわゆる“定型業務”の多さには気付いていました。

 例えば、総合商社では膨大な量の貿易書類を扱うのですが、その多くはデジタル化されていません。そのため、基幹システムに貿易の決済情報や契約などの情報を入力する作業を、以前は全て人力で行っていました。会社で何年も経験を積んだような社員さえ、こうした入力作業に追われている状況を見て、何とかできないかと考えていました」(石井さん)

その時、現場は泣いた――数人の“ボランティア”が始めたRPAを後押ししたものとは

 実は、幼少期からコンピュータにハマり、独学でC言語やJava、Pythonといったプログラミング言語を習得したばかりか、大学ではシステムを構築した経験もあった石井さん。しかし「当時は、自分の実力なんて、とてもエンジニアになれるレベルじゃないと思っていて」(石井さん)大学卒業後はあえてIT以外の道を選んでいた。

 しかし、2017年に転機が訪れる。現場の課題を目の当たりにしていたある日、ひょんなことから他社のコンサルタントにRPAのツールを紹介され、「これは役に立つ!」とひらめいたのだ。石井さんは、財務や人事、ITなどの部門から数人の有志を募り、「上司を説得し、業務時間内に活動する許可を取った上で」、まずは個人のPCで動かせる簡単なRPAツールを使い、現場の業務手順をヒアリングしては設計の仕様をまとめてロボットを作り、自動化することを繰り返していた。

 「最初はスモールスタートを意識して、できる業務を自動化していく形で進めていました。一方で、社内でRPAをもっと知ってもらいたかったので、ロボットが完成するたびに、それを実際に現場の社員の前で動かしてみせる“お披露目会”をやっていました。そうしたら、当時手入力でデータを処理していた担当者が、本当に(!)涙を流して喜んでくれたんです。『ひたすら紙から基幹システムへデータを転記する作業が、苦痛で仕方ない』という社員もいたので……そういった出来事が、自分たちにとっても活動を続けるモチベーションになりましたね」(石井さん)

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