基幹システムを「AWS化」 AGCがインフラコストを4割も削減できた理由想定の倍以上のコストダウン(1/2 ページ)

災害に備えたBCPの確保は、多くの日本企業にとって課題だ。そんな中、AWSの導入で可用性を確保し、インフラコストを4割カットしたというAGCは、どうやって従来のオンプレミスから移行を果たしたのか?

» 2019年01月21日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

 地震や台風といった災害に備えたBCP(事業継続計画)の確保は、多くの日本企業にとって共通の課題だ。とはいえ、「投資できる予算が限られている」「具体的に何をすればいいのか分からない」といった悩みを抱える企業も多いのではないだろうか。

 そんな中、大手ガラスメーカーであるAGC(旧社名、旭硝子)では、それまでオンプレミスで運用していた基幹システムをAmazon Web Services(AWS)に移行することで、災害発生時のBCPに合った可用性を確保しただけでなく、インフラの運用コストを4割削減したという。

「第2のデータセンター」よりもクラウド化を――選定の決め手になったコスト効果

photo AGCの情報システム部 電子・基盤技術グループでマネージャーを務める大木浩司氏

 全世界に200を超える関係会社を展開し、5万人以上の従業員を抱えるAGC。同社の情報システム部では、旧システムのライフサイクル終了に合わせて、社内全体のITインフラの今後を考えた際、「今までやっていたERPに加えて、製造系や技術系など、いわゆる“攻めのIT”を含めた基盤を作りたい」という結論に至り、クラウド化の検討を始めたという。

 検討を始めたメンバーが注目したのは、AWSのもたらすコストやBCP面の効果だったという。

 「2014年3月に『Amazon EC2』の値下げがあり、オンプレミスと価格が逆転しました。当時、MicrosoftのAzureといった他社のクラウドと比較しても、AWSは2割以上安かったですね。

 阪神淡路大震災や東日本大震災など、大規模な災害が起こるたびに、弊社では災害時用の“第2のデータセンター”を検討しましたが、数十億円の費用がかかるため、断念していました。一方、AWSならば、その時稼働しているデータセンターに必要なデータを移すだけです。専用の設備なしに、災害時の可用性を手に入れられる点は大きかったですね」と、同社情報システム部の大木浩司氏は語る。

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 他にも同社では、経理や人事、製造技術、知的財産などの分野に関連するコンプライアンスやセキュリティ要件、それまで社内のWindowsサーバやSAPで動いていた認証システムを同じレベルで再現できるか、といった多面的な要素を社内で検討し、問題ないことを確認。その上で、主力事業である、ビル向けのガラス生産事業を支える基幹システムをAWSで試験運用した。その結果、問題なくシステムが動き、運用コストも下がったことで、本格的な導入を決めた。

 同社では、旧システムのライフサイクルに合わせ、新システムの開発と試験運用を繰り返しながら、2015年から2018年にかけてメインのシステムを段階的にAWSへ移行。2018年12月までの時点で、SAPだけで7つのシステムをクラウド化した。

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