「データ活用」という言葉が定着した裏側で、それを支えるデータウェアハウスの技術や機能は変化し続けている。クラウドからAI、企業による購入モデルの変化まで、データウェアハウスの20年間を知る人物に聞いた。
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「データ活用」という言葉が定着して久しい。刻々と更新される大量のデータを蓄積、運用する仕組みと聞くと、データセンターに大量に並んだサーバを想像する人は多いだろう。一方、データの量が圧倒的に増え、オンプレミス環境からクラウドに移行する企業が増えた今、その技術が大きく変化しているのをご存じだろうか。
米国に、1980年代から企業や組織のデータ活用を支える技術を提供する企業がある。データウェアハウスビジネスを手掛け、日本にも展開するTeradataだ。同社の技術部門を20年間率いるスティーブン・ブロブスト(Stephen Brobst)CTO(最高技術責任者)に、データウェアハウスの変化や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)について語ってもらった。
――Teradataは、設立当時からデータウェアハウスの技術をコアにした企業ですよね。
スティーブン・ブロブスト氏(以下、ブロブスト氏) その通りです。1979年に、カリフォルニア工科大学(Cal Tech)の学生が、ガレージの中で立ち上げたときからですね(笑)。Teradataは大規模なデータ処理が可能な「並列処理型のデータベース」を生み出したことで、飛躍的に成長しました。ドットコムバブル以前のことです。
――あなた自身、キャリアを通してデータウェアハウスに関わってきたのではないですか。
ブロブスト氏 ええ。マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業した後、Teradataに加わる前から、自分の立ち上げた企業でTeradataと一緒にデータウェアハウスを構築していました。銀行やWalmartのような巨大な小売りチェーン、航空会社、電話会社に納入していたのです。
その需要が成長し、Teradataが本格的にビジネス部門を再編することになりました。1999年のことです。私は当時Teradataの親会社だったNCRのマーク・ハードに誘われて、TeradataのCTOとして入社しました。それからもう20年になります。
――2018年にラスベガスで開催された年次イベントや「Teradata Universe Tokyo 2019」で、あなたはひたすらAI(人工知能)について話しましたが、データベースやデータウェアハウスについてあまり聞かなくなりました。
ブロブスト氏 1999年から今までの間に、私たちの技術は進化すると同時に大きく変化しました。
以前はデータ活用といえば、データウェアハウス「Teradata」に代表されるように、大量のデータを管理し、レポーティングするような、どちらかといえば後ろ向きの目的で使われていました。それが今は、予測や最適化といった機能を使い、データからさらなる価値を生み出す前向きな目的に変わっています。
その転換を体現したのが、2018年10月に発表した「Teradata Vantage(以下、Vantage)」でしょう。これはハイブリッドクラウド型データ分析プラットフォームで、その中で私たちが構築したAIエンジンが動いています。
もちろん、データウェアハウスやデータベースの技術もVantageを支えています。データベースそのものが、データを処理する別のエンジンといえます。ただし、その機能は従来のデータベースで行われていたSQL処理を超えています。もはやデータベースの技術のみでは、顧客が求める価値を生み出すには不十分です。
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